Interview

インタビュー

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COVID-19禍における、小児科対応状況[第二救急指定病院 千葉白井病院 小児科]

掲載日:
宮川 芳宏 先生

千葉白井病院

宮川 芳宏 先生

千葉県白井市にある、第二次救急指定病院「千葉白井病院」小児科の宮川芳宏先生に、COVID-19禍の小児科対応状況についてお話を伺いました。

(取材日:2021年07月15日)

目次

現在(2021.7)の院内での感染症対策、小児科受診状況現在

ふだんはどのような症状の患者さんが多いのでしょうか?

もちろん、大部分がかぜ症状の患者さんですが、たまに救急車の受け入れ要請もあります。その際の症状としては、熱性けいれんや、頭をぶつけた小児患者さんが多いですね。親御さんが心配して救急車を呼ぶケースが多く、運ばれてきた患者さんを診て、重症でなければ基本的には親御さんを安心させて帰宅してもらう、という対応を行っています。入院が必要な場合は、近くの大学病院などに転送します。

診療体制について教えてください。

小児科医は私1名です。
当院の特長として土曜・日曜の通常診療を行っていますので、週の中でも特に日曜が忙しく、コロナ禍以前は、日曜の外来診察で最大120人くらいの患者さんが受診されたこともありました。2名体制も検討していた矢先にコロナ禍になり、現在も私1人で対応しています。小児患者さんは外来のみで、入院は受け入れていません。近くの大学病院で快く受け入れていただいているので助かっています。

現在、患者さんの来院状況はいかがでしょうか?

当院では整形外科の患者さんが多く来院されていますが、小児科の患者さんはそれほど多くありません。最近の小児科患者数は平日で20人前後ですが、日曜日は平日の2倍以上のこともあります。
COVID-19に関しては、当院では入院患者さんは受け入れず、検査のみ対応しています。ワクチンは実施しています。

RSウイルス感染症での受診患者は増えていますか?

そうですね。RSウイルス感染症と思われる患者さんが増えてきています。(7月現在)
ただ、RSウイルスの検査はほとんど実施していないので、臨床的な診断ですが。

小児患者さんが減っているということですが、院内で先生の役割が変わったことなどはありますか?

最近はコロナワクチンの問診を行っています。
内科の先生が不足している曜日にコロナワクチンの問診を行い、小児科の患者さんが来院されたら小児科へ、診療が終わったらまた内科で問診をして......と、小児科と内科を行ったり来たりしています。今後、小児科の患者さんが増えたときに、この状況を続けられるかは不安です。

今後、12歳以上のコロナワクチン接種については対応予定でしょうか?小児へのコロナワクチン接種について、先生のお考えはいかがですか?

おそらく当院でも対応すると思います。東京都内ではすでに、12歳以上への接種券の配布が始まっているようですね。私もこの前、都内の中学生が接種したという話を聞きました。
小児へのコロナワクチン接種については、私個人としては、ワクチンの数が限られているのなら、まずは高齢者や基礎疾患を有する方を優先に接種していく方がよいのでは、と考えています。

コロナ禍の小児科:2020年と2021年の状況

コロナ禍以降、子どもたちの来院理由や疾患傾向に変化はありましたか?

去年(2020年)の夏は、汗疹(あせも)などの皮膚疾患の小児患者さんが多く来院されましたが、夏風邪はほとんどいませんでした。また、冬のインフルエンザもまったくいませんでした。
しかし今年は、発熱やせきなどの子どもがたくさんいます。RSウイルス感染症やヘルパンギーナなど、今年は去年と比べても感染症の患者さんがかなり増えていることは間違いないです。保育園や幼稚園での集団感染もかなり起きています。今年の冬はインフルエンザが流行するのではないか、という点が心配です。
それから、他の小児科医の先生との話ででてくるのは「拒食症が増えている」という点です。

拒食症の患者さんが増えたのはCOVID-19の影響でしょうか?

そうではないでしょうか。私のところには、今年(2021年)から中学生を中心に「おなかが痛くて学校にいけないときがある」といった心因性の腹痛や「過敏性腸症候群」の患者さんが何人か来院するようになりました。

過敏性腸症候群の患者さんは昨年(2020年)は少なかったのでしょうか?

はい。去年は便秘の子どもが多かった印象があります。特に幼稚園児が多く、よく浣腸をしたり便秘薬を処方していましたね。幼稚園であまり外遊びをさせなかったり、COVID-19の影響で運動が減っていたりするのかな、と思いました。

COVID-19が小児医療に与えた課題

Growth Ringアンケート「COVID-19が小児医療に与えている最も大きな課題は?」では、「集団生活が制限されたことによる、子どもの心身の成長への影響」や「来院患者数の減少などによる、小児科経営状況の悪化」が多く選択されていました。

COVID-19が小児医療に与えた最も大きな課題はどんなものだと思われますか?

1人の医者として、一番の課題は「小児科経営状況の悪化」ではないかと考えています。
当院のように様々な診療科がある病院では、高血圧などの生活習慣病や色々な疾患の患者さんを受け入れられるため、定期的に来院してくれる患者数が多いことで比較的経営が安定しやすいですが、小児科単科の開業医の先生はご苦労も多いのではないでしょうか。
小児科で処方されることの多い、喘息やアレルギーなど、薬を継続的な処方がある患者さんを開業医の先生が診て、病院の小児科では、検査の必要なの急性期疾患や時間のかかる心身症などを中心に診ることで役割分担を行い、開業医の先生の経営を安定させるといったことが行えるといいなと考えています。
こういった役割分担では、診療報酬についても考慮する必要があると思います。
不登校や心身症の子どもは診察時間がかかりますが、診療報酬の点数が低く、コロナ禍以前から日本小児心身医学会などでも問題視されているようです。
長めの診察時間が必要な小児患者さんは病院で診察するなど、開業医の先生と役割分担をすることで、少子化が続いていっても、経営的に守れるようにすべきではないかと思っています。

地域での取り組み

地域でできる取り組みとしては、地域の小児科医が集まって話ができるような機会を作れたらいいのではないでしょうか。過去に参加していた埼玉の熊谷では、地域の小児科の先生が集まってそれぞれのお話を聞いたり、研修に行ったりする機会がありました。先生同士の連携もとれていて、「あの先生は〇〇を診てくれるから、先生のところに行きなよ」といったやり取りもありました

定期健診を通じた子どもたちのケア

私の地域では、月に3,4回、1歳半と3歳の乳幼児健診を行っています。これを小児科医が7人くらいで分担していて、私は年に5回担当しています。
乳幼児健診では、地域の保健師さんなどの支援者と接する機会でもあります。人口6万人くらいの小さい町ですので、保健師さんたちは患者さんの自宅への個別訪問なども行い、健診に参加できなかった人のフォローも行っています。さらに、保健師さんたちとの交流も増えれば、地域に密着した小児医療になるように思います。

幼稚園・保育園・学校などとの連携は行われていますか?

私が小児科医として行ったことはないのですが、幼稚園の「園医」や小学校の「校医」を小児科医がやったらよいのでは、と思いますね。
私のいるエリアが小さい町というのも関係しているとは思いますが、現状では、園医・校医を小児科医がやるといったケースは中々ありません。しかし「園医や校医を小児科医がやった方がいい」という話は、小児科医会や小児科学会でも出ています。ただ、校医というのは、教職員のための産業医的な役割が大きいのかもしれません。
私自身、健康管理や健康教育が子どもの健やかな成長の前提にあると思っているので、小児科医が保護者や幼稚園、保育所、学校の先生に対して健康教育をすることは必要だと感じています。
また、最近は、COVID-19のこともあり、保母さんなど職員の方は「何か体調不良を感じたら、すぐに病院に行ってください」と言われます。もちろん、医療機関にかかることは大切ですが、それと並行して「いかにしてホームケアするか」ということをしっかりと伝えることが重要だと思います。
ただ、私も普段の外来が忙しいと、中々十分なホームケアの指導まで踏み込めていないのが現状です。ですので、ぜひ、小児科医が保育園などに出向いて、健康教育、ホームケアの話などができればいいと思います。

医師会に期待される役割

地域一帯の健康保持や医療支援などをサポートしている医師会が、多方面に情報提供や助言をすることで、行政などの機関が効率よく動けると思います。医師会が地域住民と行政とのパイプ役を担うことで、「医師会が動いて行政が動く」という流れを作れるといいですね。もちろん、充分に機能している地域もあるのでしょう。
例えば、医師会が「小児科医を〇〇幼稚園に派遣して講演会をしますよ」といったことを言ってくれれば、医師会の活動に積極的に参加する小児科医も出てくるだろうし、幼稚園の方も小児科医の先生に来てもらって、直接話がきけると助かると思います。
パイプ役としての医師会の役割は、地域住民のために非常に重要だと思いますね。

地域の医師会が上手く機能するために必要なこと

多くの先生が、自分が勤務している病院、診療所と医師会の仕事を兼業しています。
私の場合は、勤務先の病院の一員として医師会に参加していますが、開業医の先生の場合、開業してから10年くらい経つと医師会の仕事が自動的に回ってくるようです。1人で診療もしながら担当されるという忙しさが、医師会がうまく機能していない、活動を広げられない理由ではないでしょうか。
また、医師会の仕事の報酬は私には不明ですが、中にはほとんど無報酬でやっている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。医師会に協力している先生へのインセンティブを付け、医師会の活動を活発にしていく必要があるのでは、と思っています。

COVID-19が小児科、子どもたちに及ぼした影響とは?

「病気が減った」「不登校や少数派の子ども、集団に上手く馴染めない子どもを許容できる社会になった」といった話は聞いたことがあります。学校へ行けない子どもたちが、「みんなが学校に行かないから肩身が狭くなくなった」、「堂々と学校に行かなくて済む」など、コロナ禍がもたらしたメリットのように語られることがありますが、私はそれに関しては反対ですね。
私は、コロナ禍の影響は子どもにとってはマイナスの面が大きかったと思っています。登校や外出を自粛したことで、子ども同士が接する場面が奪われたからです。
発達障害などの子どもたちにとっては、「いじめられなくて済む」という側面があることも事実ですが、私が医師として臨床をやっている中で、「学校にいけなくなって良かった」という子どもにはあまり会ったことがないですね。
今後は長期的な影響も現れてくると思います。「不登校の子どもたちにとって、コロナ禍は本当にいいことなの?」といった話も増えてくるでしょう。
子どもは、集団生活の中で他の子どもたちと関わりながら成長していくものなので、このような状況が長期的に続くことによる「子どもたちの成長への影響」を心配しています。コロナ禍が子どもたちに与えた影響は短期的にも、長期的にもみていく必要があると思います。

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