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「みんパピ!」(一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会」)インタビュー

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みんパピ!」(一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会」)は、行動科学に基づいて医療従事者および一般の方向けにHPVワクチンについての啓発を行っています。

今回は、「みんパピ!」の運営メンバーである小児科医の今西先生と坂本先生に、「みんパピ!」の活動および、小児科医としてHPVワクチンの問題にどのように向き合うべきかという点についてお話を伺いました。

「みんパピ!」の活動内容について教えてください

まずはHPVワクチンについて、正しい情報を知ってもらいたい。

(坂本先生)

「HPVについての情報を広く発信する会」(=「みんパピ!」)では、HPVワクチンに関する正確な情報を伝えることを目的に活動しています。HPVワクチン接種そのものを推奨しているわけではなく、まずはこのワクチンについて、正しい情報を知ってほしいというところに力点を置いた活動をしています。

わたしたちは予防接種後の体調不良の症状を否定しているわけではありません。症状に寄り添いつつも、HPVワクチンの有効性も伝えていく必要があると考えています。

「みんパピ!」で作成している小児科医向けリーフレットでは、安全性に重点をおいた説明を記載しています。

「みんパピ!」では、日本小児科学会、外来小児科学会、日本小児保健協会などのアカデミアと組んで医療従事者・一般の方が正しい情報にアクセスしやすいような情報提供を行っています。

今年は全国の小学校、中学校、高校に向けた啓発活動にも力を入れていく予定です。

リーフレットはこれまでにどのくらい配布されているのでしょうか?

(今西先生)

昨年の11月に作成し、フォームから請求いただいた小児科医へ郵送しているのですが、現在46都道府県400施設以上、約70,000通を配布しています。

まだ半年たっていないのに70,000通とは多いですね。

はい。メディア露出があるとリーフレットの請求も増えますね。
このリーフレットは、「教えて!ドクター」で保護者向けの情報発信をされてきた坂本先生に協力いただき、かなりわかりやすいものになっていると思いますので、小児科の先生方に活用いただけると嬉しいです。

「みんパピ!」立ち上げの背景について教えてください。

公衆衛生の専門家から、悪い意味で注目されている日本の現状を変えたい

(今西先生)

もともと救急医をされていた木下喬弘先生(「みんパピ!」副代表)が、ハーバード大学で公衆衛生の研究をされていて、そこで日本の政策担当である公衆衛生の専門家マイケル・R・ライシュ教授に「日本のHPVワクチンの現状を知っているか」と問題提起されたことが、この活動のきっかけとなっています。

木下先生は日本のHPVワクチン接種状況が極端に低く※、世界中の公衆衛生の専門家に悪い意味で注目されていることに危機感を覚え、ハーバード大学在学中に日本のHPV ワクチンに関する医療政策研究と啓発活動に取り組まれました。

世界の多くの国では接種対象者の7-8割の接種が当たり前/みんパピ!
https://minpapi.jp/hpvv-immunization-rate/#:~:text=%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%A7%E3%81%AF%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E8%80%85%E3%81%AE,%E5%9B%B3%E3%81%AE%E9%80%9A%E3%82%8A%E3%81%A7%E3%81%992%EF%BC%89%E3%80%82

この取り組みが評価されて2020年度ハーバード公衆衛生大学院卒業賞(Gareth M. Green Award)を受賞されました。

受賞をきっかけに、木下先生が中心となって「みんパピ!」のメンバーを集めたのが立ち上げの経緯です。

行動科学、産婦人科医、小児科医などさまざまな専門家が集まって運営

(今西先生)

「みんパピ!」は、行動科学チーム、産婦人科チーム、小児科チームとさまざまな職種の先生が集まって構成されています。

行動科学チームには、公衆衛生も学ばれている一宮 恵先生、弁護士でスタンフォード大学経営大学院在学中の渡邊 弘先生。

産婦人科チームには、国内の産婦人科医で「産婦人科オンライン」代表の重見 大介先生、エンジニアでもあり、産婦人科医としてHPVワクチンの啓発活動をされていた高橋 孝幸先生、産婦人科医でハーバード大学の臨床疫学コースに在籍されている三ッ浪 真紀子先生。

そして、小児科医としてわたくし、大阪母子医療センター今西 洋介と、保護者の啓発と救急外来負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクト責任者でもある佐久医療センター坂本 昌彦先生。

代表には、以前からこの問題に取り組まれていた産婦人科医の稲葉 可奈子先生に引き受けていただきました。

また、公衆衛生分野における後進の育成を目的に2名の医学生のスタッフがおり、合計12名が運営スタッフとなっています。

運営メンバーのみなさんは、本業に携わられながらの活動ということなんですね。「みんパピ!」の活動は、いつ行われているのですか?

(坂本先生)

運営メンバーでの意見交換は、インターネット上のコミュニケーションツールを利用して日々の診療の合間に行っています。

また、副代表の木下先生は海外在住、代表の稲葉先生は4児の母ということもあり、夜10時以降にミーティングを行うことも多いですね。時期によっては、まさに寝る時間を削ってやっています(笑)。

さきほどお話にでていた、リーフレットの発送も運営の先生方でされているのですか?

(今西先生)

リーフレットはわたしの自宅から、妻が夜な夜な発送作業に当たっていまして...。請求が多いと対応が遅くなってしまうこともあります。

すべてを運営メンバーの先生方で対応されているんですね。お疲れ様です。

「みんパピ!」の取り組み

「みんパピ!」は2020年8月に活動をスタートし、さまざまな施策を行っています。

正しい情報を、わかりやすく伝えていきたい

みんパピ!の発信内容は、従来の医療啓発活動とは異なりとても親しみやすい印象を受けます。

(今西先生)

「みんパピ!」には、この活動を始める前から"インターネットを使って医療知識を正しく伝えよう"としてきた方が集まっています。

「教えて!ドクター」で保護者向けの情報発信をされてきた坂本先生、「産婦人科医オンライン」で一般の方向けの情報発信をされてきた重見先生、そしてわたしはテレビドラマ「コウノドリ」の医療監修※を通じて漫画がものごとを伝えるのに有効である、と経験してきました。

※『コウノドリ』:2012年~講談社週刊モーニングで連載され、2015年TBSにてテレビドラマ化された鈴ノ木ユウさんの漫画。今西先生は、新生児科今橋医師のモデルとしてドラマの監修にも携わっています。

それぞれの経験を持ち寄って、一方的な押し付けではなく「正しい情報をわかりやすく伝える」ということをシンプルに行っているので、親しみやすいという印象を持たれるのかなと思います。

また、「みんパピ!」では行動科学に基づき対象者を強く意識しています。

HPVワクチンは、多くの乳幼児対象の予防接種と異なり保護者と10代の子どもが対象者となります。このため、子どもと保護者それぞれに届くようにさまざまな施策を行っています。

「みんパピ!」が取り組んでいるような医療啓発は日本では珍しいのではないでしょうか。参加しているわたしも非常に勉強になることが多いです。

HPVワクチン啓発活動の成果と課題

はじめは批判が怖かった

「みんパピ!」の活動について、成果と感じられている点はどんなところですか?

(坂本先生)

もともと、HPVワクチンの問題について積極的に関わっていたわけではないんです。もちろんHPVワクチンの課題は認識していましたが、関わると批判されるんじゃないかという不安が強かったんです。一方で、何もしない自分が申し訳なく、なにかしないといけないという気持ちはありました。そんな時、ご縁をいただき関わることになりました。

活動への不安がなくなったのは、昨年10月のクラウドファンディングで2500万円以上が集まったときです。実際、SNS上でも批判する人よりも応援してくれる人が圧倒的に多かったんです。

あとは、去年10月に地域の学校から感染症についての講演依頼があったんですね。

求められていた新型コロナの話をした後、当初の予定になかったHPVワクチンの話をしました。あとで苦情が来ることを覚悟していました。でもわたしの不安とは異なり、聞いてくれた方から「すごく新鮮でよかった」と好評だったんです。

そのとき、HPVワクチンの問題は、「知らないからなんとなく怖い」という人たちがワクチンを接種していないことなんだと思ったんです。多くの方は、正確な知識を届けてもらうことを望んでいるんだ、と肌で感じました。

学会や医師会が徐々に協力的になってきた

今西先生はいかがでしょうか。

(今西先生)

坂本先生のお話のとおり、クラウドファンディングでの資金調達に成功したというのは手応えとしては大きかったです。

実は、最初からアカデミアの全面的な協力が得られたわけではありませんでした。

ですが、「みんパピ!」の活動をしていく中で、学会内のワクチン委員会や、大阪小児科医会の先生方の協力が得られるようになり、今ではアカデミアに協力いただけるようになりました。

クラウドファンディングの成功が、「みんパピ!」が民衆の支持を得た事実として大きなインパクトを持ち、わたしたちの活動の追い風になったのではないかと思っています。

4月17日(土)12:30~のランチョンセミナーでは、小児科学会の全面協力があり会場で一番大きな場所でお話させていただきます。セミナーについてはのちほどもう少し詳しくお話いたします。

SNSの外へ、学校へ。正しい情報を伝えていきたい

では、課題はどんな点でしょうか。

(坂本先生)

一番は、SNS以外の場所へ情報を届けることです。
現在わたしたち「みんパピ!」の主戦場はSNSです。

ですが、「みんパピ!」の活動がSNS上でどれだけ盛り上がっていても、SNSを見ていない人にはなかなか届いていない。

例えばわたしの勤務している病院の小児科の先生方はあまりSNSを見ておらず、「みんパピ!」の活動は十分には知られていません。

だからこそもう一工夫が必要で、いろんな届け方をしていかないといけないな、と思っています。

SNSの外に出ていく、という意味では今年3月にNHK「おはよう日本」でHPVワクチンの問題が取り上げられたことは画期的な一歩だったと思っています。

今西先生はいかがでしょうか。

(今西先生)

学校に対するアプローチも課題の1つです。コロナ禍ということもあり、学校への講演にもなかなか行けないですし、小児科の受診率も下がっているために小児科を通じて小中学生へ情報を届けることが難しくなっています。

このため、今年は「日本教育新聞」さんと連携して小中学校に向けて情報提供を始めていく予定です。

(坂本先生)

小学校低学年くらいから遊びやゲームを通じて予防接種の大切さを伝えていき、そこから「HPVワクチンの話が大事だよね」という下地が作れるようになるといいな、と思っています。

一方で、13歳くらいの女の子がワクチンを受けたいと思った場合は保護者の方に相談することになるため、子どもと保護者どちらにも啓発していく必要があると思っています。

小児科医としての成果や課題

HPVワクチンを取り巻く空気は、確実に変わってきている

小児科医として感じられている、「みんパピ!」の活動の成果や手応えを教えてください

(坂本先生)

活動を始めた2020年秋以降、少しずつ空気が変わってきたなと感じています。

SNS上でも過去に小児科医がHPVワクチンの話をすることはあまりありませんでした。ですが、「みんパピ!」の活動以降、小児科の先生方がこの問題に関して論文紹介などの発信を積極的にしてくださっています。

実際にSNS上でHPVワクチンの情報発信を行っても批判や中傷などの攻撃はされないんだと実感すれば、小児科医は安心し、啓発を続けやすくなります。

この問題への関わりを躊躇してしまう小児科医は少なくありません。最初の一歩を踏み出すためのお手伝いは「みんパピ!」の活動を通じて少しずつできているのかなと思います。

一方で、さきほどお話したとおり、SNSの外ではまだ啓発は十分とは言えず、これからもさまざまな形での発信が必要と思っています。

HPVワクチン啓発において、小児科医はキーパーソン

一方で、小児科医としての課題はどんな点だとお考えですか?

(坂本先生)

HPVワクチン啓発において、小児科医はキーパーソンとだと思っています。

これまでの経緯から、この問題は産婦人科医の問題と考えている小児科は多いと思います。わたし自身もかつてはそうでした。

ですが、産婦人科医を受診する思春期の子は少数です。多くはかかりつけ医である小児科医を受診します。小児科医が後ろ向きでは、保護者とお子さんは不安なままです。

小児科医は、かかりつけ医として対象年齢のお子さんやご家族とすでに人間関係ができています。

不安の強いワクチンだからこそ、ご家族と信頼関係がある小児科医から正しい情報を伝えていくことで、不安を軽減できるのではないでしょうか。

そのためにも大切なことは、まずは小児科医自身が安心することです。
小児科医自身に不安があると、ワクチンの話を正しく伝えることはできません。

安全性と有効性の知識をアップデートしていけば、自信を持って正しい情報を伝えることができます。

そして、いまやHPVワクチン啓発をしたとしても、社会的に非難されることはないことも知ってほしいと思っています。

HPVワクチンを使うことへ怖さを感じていらっしゃる小児科の先生へ

小児科医が正しい自信を持って伝えていくために、「みんパピ!」として取り組まれていることはありますか?

(今西先生)

4月17日の小児科学会ランチョンセミナーに、「みんパピ!」として「HPVワクチンのキーパーソンは小児科医である」の講演を行います。

登壇するのは座長として大阪母子医療センター新生児科の和田 和子先生、「HPVワクチン接種後の自律神経症状と疼痛とをあらためて考える」という演題で関西医科大学の石崎先生、そしてわたし今西が「社会行動科学の知見を取り入れたHPVワクチン啓発の効果」についてお話させていただきます。

このセミナーでは、HPVワクチンの説明や接種に不安を覚える小児科の先生に向けて、具体的な説明の仕方をお伝えできる内容となっていますので、ぜひご都合の合う方は聞いていただきたいです。

2013年のマスメディアによる報道以降、HPVワクチンを使うことへ怖さを感じていらっしゃる小児科の先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ランチョンセミナーでは、報道されていた副反応はHPVワクチンとは因果関係がない※ということ、10代に筋肉注射を打つことのリスクを関西医科大学の石崎先生に講演いただきます。

HPVワクチンの安全性はどう評価されているのですか?/日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

そして、世界では子宮頸がんを撲滅することを狙っている国も出てきています。※

接種率が高い国で期待できる「集団免疫」
https://minpapi.jp/hpvv-immunization-rate/

知識をアップデートしていくことが、啓発への不安を取り除くために大事なことだと思っています。ぜひたくさんの先生に聞いていただきたいです。

Growth Ring会員の先生へ

HPVワクチンを使うことへ怖さを感じていらっしゃる小児科の先生へ

Growth Ringは小児科の先生方が閲覧されています。お2人から、小児科の先生方へ伝えたいことはどんなことですか?

(坂本先生)

先にお話したとおり、わたし自身もともとHPVワクチンの問題に関わることが怖かったんです。炎上や批判への不安がありました。ですので躊躇してしまう小児科の先生方の気持ちはすごくよくわかります。

だからこそ小児科の先生方も安心できるような情報発信をしていきたいです。

ぜひ先生方からもいろいろな声をお寄せいただきたいと思っています。

(今西先生)

わたしは新生児科として周産期医療に関わっており、子宮頸がんで円錐切除をされたお母さんとお話する機会があるのですが、みなさん「ワクチン打っておけばよかった」とお話されます。

HPVワクチンは、新生児科医からレコメンドしていく必要があるとも思っています。マザーキラーといわれている子宮頸がんからお母さんを守ること、それはつまり子どもの権利を守ることにつながります。

子どもの権利を守ることが小児科医の使命であり、それが成育基本法で定められた「切れ目のない支援」にもつながっていくのだと考えています。

「みんパピ!」では、小児科の先生方が安心してHPVワクチンの啓発を行えるように、そして正しい情報をさまざまな方法でわかりやすく伝えていきます。そのための努力は惜しみません。先生方と一緒に知識のアップデートをしていければと思っています。

先生方のお話を伺い、Growth Ringとしても、小児科の先生方の不安を払拭できるような取り組みができればと思いました。実際にHPVワクチン接種を行われている先生のお話や、始められた先生などにお話を伺うことで、会員の先生方の不安払拭に貢献できればと思います。

(坂本先生)

わたし自身、HPVワクチン接種を行っている先生の姿勢を見て安心した、ということもあります。自信を持って対応されている先生の姿は小児科医向けの啓発になると思います。迷走神経反射をはじめ接種後に体調不良になるお子さんはいらっしゃいますので、あらかじめどんな話をすればよいかも含め、知識をきちんとアップデートする必要があります。

今後も「みんパピ!」では、小児科の先生方が安心してHPVワクチンの啓発を行えるように、さまざまな形で情報を伝えていく努力をしていきます。

「みんパピ!」の今西先生より、Growth Ring会員の先生方に質問をいただいています。
ぜひアンケートにご協力いただけますと幸いです。

また、Growth Ringでは4月15日から「招待キャンペーン」としてGrowth Ringをお知り合いの先生に紹介いただいた先生に、お子さまに配れるキラキラシールをプレゼントするキャンペーンを実施しています。

「みんパピ!」さんのインタビュー記事を、お知り合いの先生にぜひ紹介ください。

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