Interview

インタビュー

インタビュー

COVID-19による子どもたちへの影響と診療体制の変化[桜ヶ丘こどもクリニック]

掲載日:
兵藤 寿美 先生

桜ヶ丘こどもクリニック(https://www.sakura-c.jp/

兵藤 寿美 先生

静岡県三島市にある桜ヶ丘こどもクリニックの兵藤先生は、感染症対策の取り組みとして発熱外来を設置することで、新たな診療体制を整え、コロナ禍でも診療を続けられています。
今回は、コロナ禍の前後における小児科クリニックの診療状況の違いや、発熱外来での患者さんの受け入れ体制、コロナが小児医療に与えた影響などについて詳しくお話を伺いました。

(取材日:2021年8月5日)

目次

前段

桜ヶ丘こどもクリニックは、2016年に開業した静岡県三島市にある小児科クリニックです。常勤の小児科医1名、非常勤の小児科医1名の2名体制で運営しています。また、医師の他に、常勤とアルバイトを合わせて看護師が5名と、医療クラークが7名勤務しています。

「できるだけ本質的に患者さんを診たい」と思っていて、風邪で来院したから薬を処方するだけではなく、患者さんの背景なども含めて成長を見守りたいと考えています。しっかりと時間をかけて包括的に患者さんを診ることで、その患者さんだけではなく、世帯を含めてケアしていけたらと思っています。

2021年8月の受診状況

COVID-19第五波、RSウイルス感染拡大と国内の感染症は増えている状況ですが、最近の診療状況はいかがですか?

東京の小児科クリニックではRSウイルスがすごく増えているというニュースがあり、当院でも今年の1~2月は受診された方が多かったですが、現在は減ってきている印象です。
最近受診された方の中にも、「もしかしたらRSウイルスかもしれない」と思う方もいらっしゃいましたが、診察や検査をしてやはり違うということもありました。

クリニックの感染症対策は現在どのように行われていますか?

今は発熱外来を設置して、クリニックの外にテントを建ててその中で診療しています。発熱外来の時間を9時〜10時に設定し、風邪などの発熱以外の患者さんや健診などは10時から診療するようにしています。
そのほか、発熱の患者さんとそれ以外の患者さんがすれ違わないように心がけたり、遊ぶスペースを全て撤去したりするなどの対策を行っています。

発熱外来はどのように対応していますか?

発熱外来は、外の駐車場にテントを建てて、受付もすべてそこで行っています。外で受付するスタッフが2名、車に伺って受付をします。テントの中のクラークスタッフが1名、そして医師の私と、看護師が1〜2名で対応しています。検査や吸入、採血も全て外でやっているので、必要に応じて看護師の人数を調整しています。

周りの感染者数の増減や、その人の行動範囲も加味しながら、感染の可能性の低い方は熱が出たばかりの時は1〜2日は様子をみることもありますし、3〜4日以上続けて熱が出ている時には抗原検査、明らかに濃厚接触者だと思われる方や感染機会を疑う場合はPCR検査を行います。実際に検査する割合は7~8割程度となっています。

1日の発熱外来で診られる患者さんの人数を教えてください

1日最大で12名の予約制となっています。予約外も適時、車で待機していただき、テントにご案内します。

発熱外来の待機中に気をつけていることはありますか?

駐車場の中なので、事故にはスタッフも親御さんも気をつけています。テントの上に人気キャラクターのバルーンを置いたり、キャラクターがデザインされた服を着たりなど、その場から動かないように小児患者さんの注意を向けるようにしています。処置をしている時に親御さんが動画を見せてくれることもあります。

発熱以外の受診理由にはどのような症状がありますか?

熱はないけれど咳が出る患者さんや、アレルギーなどの患者さんが多いですね。また、夏休みなので夜尿症の患者さんも多くなっています。

コロナワクチンの接種対応をされていますか?(成人含め)

今年の8月からは、小児科だけ個別接種で、12歳から18歳までの患者さんに接種していくことになりまして、当院でも8月中旬からワクチン接種の対応が始まります。
成人の方については、クリニックのある市は、基本的には集団接種と大きい病院のみの接種となっていて集団接種のお手伝いに行くこともあります。

小児(12歳以上)へのコロナワクチン接種についてのお考えを教えてください

現在判明している範囲で安全であると考えられますし、個人的には賛成です。校内や園内で感染者が出てしまうと休校・休園になりますよね。お休みを何度も繰り返していると、子どもたちへの悪影響が後から色々と出てくると思います。集団免疫の観点からも、小児へもワクチンを接種した方がいいと考えています。

一方で、集団での思春期の小児へのワクチン接種は、迷走神経反射で倒れたりする可能性も高く、アナフィラキシーなども考慮すると、怖いとは思っています。

受診される患者さんの保護者からどのような質問がありますか?

「本当に安全なんですか?」「ワクチンを打った方がいいんですか?」などの質問があります。中には、「子どもはあまり重症化しないと考えられているので、接種しなくてもいい」という考えの方もいらっしゃいます。

2020年と2021年での来院状況、患者さんの来院理由の変化について

患者さんの来院状況はどのように変わりましたか?

患者さんの来院数は回復してきています。
2020年の5〜7月頃は、例年の3分の2から半分くらいにまで患者さんの来院数が減っていました。テントでの発熱外来を開始した去年の9月頃から通常程度に戻り、現在(2021年8月5日時点)は1日に平均60〜80名程度の患者さんが来院されています。

来院される患者さんの疾患傾向に変化がありましたか?

基本的には、発熱や風邪などの一般的な小児科疾患が来院の理由ですね。変化としては、COVID-19で休校期間が増えたために、肥満の方が増加しています。学校から、高度肥満の疑いとして受診を勧められた方もいらっしゃいます。

ただ、肥満はなかなか難しい問題です。検査の結果で目立った疾患の原因がない場合、「単純性の肥満だから食事は制限しましょう」、「運動として、30分の散歩を早足でしましょう」などのアドバイスはしますが、続けることが難しいようです。
できる限りの指導をしたいと思っていますが、そのためには患者さんの継続的な受診が必要です。

来院状況の変化に合わせて、診療体制を変更しましたか?

発熱外来の対応もあるため、今まで通りの体制では人が足りず、看護師もクラークも少しずつ増やしています。あとは、オンライン診療を2020年の5月から始めました。受診することが難しい患者さんに、喘息やアレルギーのお薬だけでも出せる体制を整えるために始めたことがきっかけです。

オンライン診療の活用法や工夫している点はありますか?

オンラインで繋がると共にLINEで患者さんの写真を送っていただいて、薬を処方する体制を整えています。例えば、皮膚疾患の場合には、複数の角度から撮っていただいた写真をもとに診断しています。

オンライン診療は時間の管理が大変ですが、スタッフが外来診察の空き時間をうまく見つけてスケジュール管理をしてくれています。また、衛生面からも、スタッフがお金を触ることは避けた方が良いと思い、会計も現金ではなく、ほとんどクレジットカードや電子決済で対応しています。

2020年は受診控えが問題視されていましたが、乳児健診の中止による疾患の発見遅れや、予防接種の遅れなど、子どもたちへの影響はあったと思いますか?

三島市では、3ヶ月程度は健診を中止しましたが、そのタイミングで健診ができなかった方たちを集めて後日に対応していたので、大きな問題は起こりませんでした。
予防接種に受診控えが影響したとは感じていません。疾患の発見が手遅れになったケースは今のところありません。

COVID-19が小児医療に与えた最も大きな課題は?

Growth Ringのアンケートに対する先生のお考えはいかがでしょうか?

アンケートの「COVID-19が小児医療に与えている最も大きな課題は?」に対する回答として「集団生活が制限されたことによる、子どもの心身の成長への影響」が多く選択されたように、やはり、集団生活の制限は子どもへの悪影響があると思います。

家庭や学校の環境の変化に無理なく順応できる子もいますが、繊細な性格の子や、COVID-19以前から不登校の傾向があった子は、休校期間を明けて学校に行けなくなってしまったケースが多い印象です。

不登校の子どもが増えた印象はありますか?

数自体はしっかりと把握していませんが、不登校に関する相談は受けました。以前まではなんとか学校へ行っていたけれど、休校になって自宅にいるのが心地良くなったり、学校で嫌な思いをしたくなかったりと考えて、学校へ行けなくなったと思われる子たちが多かったですね。

不登校の子どもに対してはどういう支援をされていますか?

基本的には隣町にある心理カウンセラーが在籍している施設を紹介しています。当院にはカウンセラーがいませんし、私自身も診療があるので時間をかけてお話を聞くことができないためです。
中には、病気が潜んでいるケースもあるので、病気の可能性が高ければ専門の医師がいるところを紹介します。一方で、カウンセリングを何回か実施すれば良くなると思われる方には、カウンセリング専門の施設を紹介しています。

課題がある一方で、良い変化もありますか?

手洗いやうがい、マスク着用は以前よりも徹底されていますし、感染症対策の意識も高くなったと思います。幼稚園くらいの子どもであれば感染症対策の意識を持っており、「コロナ」「ワクチン」「手洗い」などのワードも、大人ではなく子どもから出てくることの方が多いですね。
コロナ禍を通じて、小さい子どもでも感染症対策や予防という観点をしっかりと持つことができたのは、良い変化だと思います。

PAGETOP