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学会レポート・取材

第123回日本小児科学会学術集会

子どもの療育:開業医の立場から医療的ケア児との出会いから始まった地域療育

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このシンポジウムでは、子どもをめぐる虐待・貧困・療育などの諸問題について、それぞれの領域の専門家が講演を行った。本レポートでは、療育支援にフォーカスしてお話されたひばりクリニック小児科 髙橋 昭彦 先生の講演を取りあげる。

サマリ

髙橋先生は医療的ケア児の在宅医療、人工呼吸器をつけた患児の預かりサービスを通して、医療的ケア児とその家族の負担を取り除くサービスのありかたと医師の役割、家族単位で関わることの意義、今後解決したい家族の問題などを説明された。

小児在宅医療も行う「ひばりクリニック」

ひばりクリニック:https://hibari-clinic.com/

2002年5月に開業し、午前中に外来診療、午後に在宅診療を行っている。外来の4割は小児であり、在宅診療においては、2割強が小児(または小児期からかかっていた移行期の患者)にあたる。患者の特性として、家族単位でかかっている場合が多い。また、2016年4月からは病児保育も行っている。

小児の在宅医療の特徴と問題点

小児の在宅医療は、高齢者の在宅医療と異なり、障害が重度で医療的ケアが必要な方が多く、また、在宅医療を受けながら専門医療機関の受診を継続する患者が多い。一方、ケア側では医療・福祉だけでなく教育・保育など、多職種チームが関わり成長を支援する必要があるが、利用可能なその社会的資源は極めて少なく、そのため家族、特にきょうだいたちへの負担が大きい。

小児在宅医の仕事とは?

子どもと家族の負担を減らし、安心を届けるのが小児在宅医の仕事であるという。家族を含む予防接種の実施や、子どもの診療時に家族の診療、訪問薬剤管理指導が入っている場合は、子どもの分と一緒に家族の処方薬を届けたりすることも。

認定非営利活動法人「うりずん」

認定特定非営利活動法人「うりずん」:https://www.npourizn.org/

医療的ケア児の支援を行う「うりずん」は、2014年3月に認定特定非営利活動法人となったが、そこまでの道のりは厳しいものだった。

「うりずん」立ち上げのきっかけは、髙橋先生が人工呼吸器をつけた患児を訪問した際、普段子どものケアを行っていた母親が体調を崩し、父親が仕事を欠勤し介護をしているのを目の当たりにしたこと。「なんとかしたい」と人工呼吸器をつけた患児の預かりを決意されたという。そして、2007年、診療所の和室で人工呼吸器をつけたお子さんの日中の預かりをはじめた。このとき採算性はまったくなかったという。

子どもにとっても家族にとっても「バリアフリー」な環境を

「うりずん」のレスパイトケアが目指すものは「安全・安心・安楽」の3Aである。「安楽」には患児本人が楽しめ、家族も罪悪感なく預けられるという意味が込められている。家族をケアの負担から解放することが目標であり、これは子どもにとっても重要な課題である。

新設された「うりずん」では、夏のプールや、お祭りなど家族単位で楽しむイベントなどが設定されている。

また、子どもにとってのバリアフリー=子どもにとって心地よい環境を保障することが重要である。ここでいう心地よい環境とは、動作の補助をするという(Doing)ことに加えて、空気がおいしい、素敵な音楽が流れる、日差しが心地よいといった、そこにいる(Being)ことの心地よさを保障する ことも大切ではないか。

医療的ケア児とその家族の生活実態調査

病気や障害をもっておられる患児のきょうだいは非常にさみしい思いをしていることが報告されている。昨年の「医療的ケア児とその家族の生活実態調査」では、医療的ケア児のきょうだいの6割がストレスを感じていることが分かった。その具体的な声には、「家族で旅行に行きたい。習い事がしたいけど、親が送り迎えしないとダメだからできない。」「お母さんとたくさん遊びたい。」「帰ってくると、お母さんがいつも疲れて寝ているのがイヤ。」「自分が成人して家を出たらさらに両親の負担が大きくなるので心配。」などがあった。

今後に向けたポイント

医療的ケア児とその家族の問題は、解決できない部分が多くある。例えば、保育では、呼吸器をつけた子どもを保育園に預けてフルタイムで働くということは全国的にもほとんどされていない。また、教育も、「親が滞在した上で」という条件が外れないところがほとんどである。卒業した後の行き場に関する問題(18歳問題)や、親なき後の居場所の問題もこれから考えていく必要がある。

開業医として医療的ケア児に関わられてきた髙橋先生からは、「医療だけで解決できない問題が非常に多い。訪問看護や障害者相談支援相談員、保健師といった多職種で関わることが支援のポイントではないか」と説明があり、最後に長年治療に関わっている患児とご家族の笑顔の写真で講演を締めくくられた。

Growth Ring事務局医学生スタッフコメント

「患者さんの生活を支える医療」と言うのは簡単ですが、その意義・それを実行する苦労や素晴らしさを改めて考えさせられた講演でした。

本講演で、医療的ケア児とその家族の支援は、まだ行き届いていない部分も多いことを知りました。髙橋先生や「うりずん」スタッフの方々が行われているような取り組みが広がることによって、今後社会の理解を得ながら改善していくのだと期待しています。

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