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学会レポート・取材

(20/11/7、8)第52回日本小児感染症学会総会・学術集会

小児科医による新型コロナウイルス感染症の偏見・差別対策
(富山大学 小児科 種市 尋宙 先生)

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2020年11月7日、8日で行われた「第52回日本小児感染症学会総会・学術集会」での緊急シンポジウム2「新型コロナウイルス感染症-パンデミック下の小児科医」について、今回は富山大学 小児科 種市 尋宙先生が発表された「小児科医による新型コロナウイルス感染症の偏見・差別対策」についてレポートする。

責められる学校と、広がる不安の中で

富山県では第一波の際、3月時点で感染者はほとんど見られなかったが、5月末には10万人あたりの感染者数が全国ワースト3になった。感染者が増加するにつれ、感染者に対する誹謗中傷が激しくなり、SNSで実名が公表されるなどの事例も生じた。また、小学校でクラスター疑い(または複数感染者)が発生した際には、報道を通して全国からその学校が責められるような事態もあり、感染児童がいじめを受けるような事態も懸念された。

こういった事態に対し小児科医として実施した取り組みは大きく以下の3点であった。

いじめ・差別から子どもを守るために

感染小児の管理を行うとともに、学校に連絡し、児童が学校に復帰する際のいじめ・偏見問題への対応を相談した。

専門病院でもクラスターは発生しており、学校が責任を負う必要はないこと、および小児科医としてバックアップに入ることを伝えた。

その後感染児童の家族と話す場を設け、「報道により個人情報がさらされた」「周囲の目が気になって隔離解除後も外出が困難である」「転居や転校を考えている」といった苦悩を共有した。

5月以降、差別偏見対策を検討するため各校の教員と協議する場を設けたり、保護者を対象とした相談会を開いたりすることで医学的見地から保護者・教員の不安や偏見を解消するよう試みた。その後児童らは学校に復帰したが、感染した児童へのいじめは報告されていない。

メディアへとの相互理解へ

当初感染者の職種を表示してクラスターの発生状況を示し、多くの個人情報を含む情報が公開されていた他、新規感染者の通う学校や行動履歴を細かく記載するような報道も目立った。

こういった報道に対するアプローチとして、相互理解を得るために新聞社やテレビ局と個別に話し合いを行い、過剰な報道を避けるように伝えた。その後富山市も感染があった学校名を非公表とする方針を出し、子どもを守るためであると強調したことでメディアから踏み込んだ報道がなされることもなかった。

教育委員会との連携。子どもたちにとって本当に怖いものはCOVID-19なのか?

学校再開にあたり、感染対策について医療者と連携を取りたいという市教育委員会の希望から富山市立学校新型コロナウイルス感染症検討会議が組織された。子どもたちの日常を取り戻すことを大きな方針とし、過剰な感染防止対策を避けつつ感染対策と共に偏見・差別の防止も行い心身共に安心して学べる環境を提供することを目指した。

また、教育委員会のバックアップの下、富山市内の小中学生全家庭に対し学校感染対策の取り組みをリーフレットにして随時配布した。

医療と教育が連携することにより、大きな力が発揮されたと感じている。

5月26日に対策会議をスタートし、5月にはフェイスシールド・衝立の撤廃、6月には体育時、登下校時のマスク着用の非推奨、部活動の再開、7月にはうがい・歯磨きの再開、合唱・合奏を禁止せず注意点の案内、9月には運動会の各校判断での開催OKという形で対策緩和を実施した。

このような取り組みの下、富山市での第二波での児童の感染は1例のみであった。本邦における新型コロナでの小児死亡数は9月末の段階で0件である。

子どもたちにとって本当に怖いものとはいったい何なのか。
現状においては、過剰な感染対策が子どもたちを追い込んでおり、誹謗中傷もまたその1つではないかと考えている。

子どもたちを守る、小児科医の役割

小児は医学的というよりは社会的な観点から被害を受けており、その問題を解決するために社会における不安要素を抽出し、科学的データを示して認識の変容を促す必要がある。小児科医は学校や教育側との連携を取りつつ、先に述べたような役割を果たし、小児を守る立場にあると考えられる。

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