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学会レポート・取材

第124回日本小児科学会学術集会

新型コロナウイルス感染症の流行から考える小児医療のこれから

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取材日:

2021年4月16日~18日「第124回日本小児科学会学術集会」での「三委員会合同シンポジウム 新時代の小児科医とその育成」について、今回は、中林 洋介先生(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科、小児科)から、「新型コロナウイルス感染症の流行から考える小児医療のこれから」についてレポートする。

新型コロナウイルス感染症が小児医療、特に受療行動に及ぼした影響

COVID-19に伴い、病院、診療所いずれも患者数が激減したといわれる。特に小児科で患者数の落ち込み具合が大きい。しかし、診療所の患者数についてのデータは存在したが、病院の小児科については明確なデータがなかったため、小児科学会で「新型コロナウイルス感染症に伴う、小児医療機関の保険診療上の課題に関する調査」と題して、2020年から2021年にかけて2回調査を行った。二次調査の内容について、速報値として結果を提示する。

回答施設の背景

全国2,500施設に調査票を送り、646施設から回答を回収した。都道府県ごとに定められた小児中核病院の約半数、地域小児科センターの2割弱、地域振興小児科の1割程度が回答しており、母集団を必ずしも反映していない可能性がある。

回答施設の3割程度が感染症指定医療機関であり、成人、小児の少なくとも一方についてCOVID-19患者を受け入れている病院が半数程度であった。また、重点または協力医療機関が7~8割程度となっており、ある程度COVID-19診療に関わっている施設が多いと考えられる。更に、周産期母子医療センターには4割程度、救命救急センターには2割程度の病院が該当している。

結果

全体の6分の1にあたる87施設がCOVID-19の影響で小児病床数を減らさざるを得なかったと回答している。

これは、成人病床を確保するための病棟再編によるものと考えている。また、診療抑制があったと回答した施設が6割弱に上り、診療報酬上の施設基準を満たさなくなった、またその見込み、と回答した施設も8%に上った。小児科医師数については5%弱、小児科看護師については10%程度の施設で削減したとの回答があった。

2018年11月から2020年12月までの月ごとの患者数について調査したところ、小児の総外来患者数は流行開始後前年の6割程度まで減少し、現在は8割程度まで回復していた。

入院・外来ともに、病院全体の患者数の推移と比較して小児科で患者数減少率が大きかった。

初診・再診料の比較では初診料の減少が大きいが、小児科が感染症を含む急性疾患を対象としていることが原因の1つと考えられる。

また、時間外入院についてもおそらく同様の理由で減少幅が大きくなっている。入院日数は一時的な上昇をみたが、その後元に戻っていた。新生児については大きな変動はないが、今後出生数の減少に伴う変化がみられる可能性がある。

COVID-19患者を受け入れている施設について、外来・入院患者数の推移をみると、小児患者のみ受け入れている施設では患者数の回復が見られている。

慢性疾患や一定の確率で生じる疾患は消えることはないため、COVID-19流行が落ち着いたところで患者数が回復してきているのではないかと推察される。成人の病院でも同様の傾向がある。

大学病院や専門病院、福祉病院では患者数回復の傾向が高いが、急性期疾患を扱う一般病院ではやや回復が鈍くなっている。管理料1・2を取っているような、専門性が高く規模の大きい病院における患者数減少の影響は管理料3〜5の病院と比較すると比較的穏やかであった。ただし、2020年11月以降、更なる感染の流行が見られており、引き続き患者動向を追っていく必要がある。

今後の小児医療、特に病院小児医療が子ども・家族と地域に対して担っていく役割

患者数の減少もあり、子どもたちの生活全体から見たときに、小児科医が純粋に医療だけで貢献する場面は少なくなっていくかもしれない。ただし、小児医療の規模を小さくしても良いということではない。

2020年4月から10月の虐待対応件数及び不登校を主訴に来院した件数について、増加したと答えた医療機関が減少したと答えた施設より多くなっていた。小児科医の業務には、医療のみならず保健・福祉・教育・行政などと連携して行う仕事が多くある。しかし、これらは医療保険外で対応しなければならず、こういった活動を支援する仕組みを考えていく必要がある。

ここでキーワードとなるのが「成育基本法」であり、子ども関連の法律を横断的にまとめる理念法として2019年に成立し、内容の整備が進められている。これまでの枠組から離れて小児科医の仕事を考えることが必要である。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の流行は急性疾患中心であった小児医療の形を激変させたが、本発表で紹介した調査結果はそれを裏付けるものとなった。

都道府県が整備する小児医療提供体制は主に急性疾患に対応できるよう構築されたが、新型コロナウイルス感染症の流行はこれを根底から揺るがしている。一方、十分な対応ができていない保険・福祉・教育との連携をはじめとする、現在直面している課題への対応は急務である。

今回の危機は、将来小児科医が子どもたちの健康と地域医療について担う役割を再考し、変わるべき機会と考える。

Growth Ring事務局医学生スタッフコメント

新型コロナウイルス感染症に伴う患者数の減少が特に小児科で大きいことは、複数の記事で読んだことがありましたが、具体的なデータで見て、その影響の大きさを改めて実感しました。

小児科が他の診療科と違う点として、子どもの病気を治すだけではなく、子どもの心身の成長や、生育環境についても考慮しながら診療を進めていく必要があることが挙げられると思います。

今回の発表で、そういった点についても触れていただき、小児科医の職務の多面性を感じた一方で、そういった業務が保険診療ではなく、支援体制が十分ではないことも初めて知りました。実臨床の場で、個人として診療に限らず多面的な活動をすることも大事ですが、より多くの小児科医がそういった活動をできるよう制度を整えることも必要になると感じました。

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