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学会レポート・取材

第53回日本小児感染症学会総会・学術集会

小児におけるCOVID-19のレジストリ調査

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2021年10月9日、10日に開催された「第53回 日本小児感染症学会総会・学術集会」より、シンポジウム2「小児におけるCOVID-19」のなかで発表された「小児におけるCOVID-19のレジストリ調査」について、今回は、勝田 友博先生(聖マリアンナ医科大学 小児科学教室)から解説されたデータベースを用いた国内発症小児COVID-19症例の臨床経過に関する検討と、今後の課題についてレポートする。

日本小児科学会による小児COVID-19症例のレジストリ調査について

日本小児科学会では、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会が行っている「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」に基づき、主に日本小児科学会会員が登録した小児COVID-19の状況を公開している。

流行当初の2020年2月から現在まで調査が継続されており、調査対象は20歳未満の国内発症COVID-19の全症例。重症度を問わず外来症例を含めた全てが対象で、診療時にその都度の登録をお願いしている。ただし、あくまで任意の登録を依頼したものであり、最新の国内小児COVID-19症例数を示しているわけではない。

参考までに「日本小児学会 データベース」と検索すると、該当ページが誰でも閲覧できる。また、スマートフォンやタブレット等で簡単に閲覧できるアプリ「JPS COVID-19」(iOS、androidいずれも)もある。なお、データベースは毎朝8時にアップデートされている。

レジストリに登録された小児COVID-19のエピカーブとリミテーション

調査スタート当初、このレジストリは日本国内における10歳未満の人口の10%程度をカバーしていたが、小児罹患者の増加に伴い2021年10月5日時点では2.7%程度のカバー率であり、実際のエピカーブはもう少し右上がりになる。流行当初、国内においては濃厚接触者を対象とした周辺流行調査を積極的に行っていたこともあり、登録患者の半数程度が無症状だった。しかし、最近では無症状者が39%で有症状者が61%と、有症状者が増加している。

データベースで小児COVID-19の年齢別登録数と管理区分をみると、10代後半の罹患者が少ない。しかし、この結果はレジストリへ任意登録している医師が小児科医であるため、登録率が低いだけであり、実際は10代後半の罹患者は多い。

実際に、厚労省が発表している国内の年齢階級別陽性者数を見ると、10歳未満が5.4%、10代はその倍となる10.1%で合計すると15.5%の状況(2021年9月末時点)。実は10歳未満と比較して10代の罹患者が多いのが国内の現状である。

また、7割程度が入院症例となっているが、主な回答者が第2次、3次救急機関に所属する会員が多いためであり、比較的軽症なクリニック患者のデータが少ない。これがこのレジストリの特徴であり、リミテーションとなっている。

レジストリに登録された小児COVID-19症例における感染経路

レジストリに登録された症例に限定すると、7割以上が家庭内感染で、そのうち父親が4割という結果だった。次いで、母親、兄弟という状況になっている。幼稚園・保育園での感染は6%、学校関係は5%と少ない。

小児COVID-19の症例は、9割程度の感染経路が判明している点が、成人のケースと大きく異なる。家庭内感染を防ぐことが、小児のCOVID-19感染防止につながると考えられる。

ただし、年齢層別に見てみると、16歳-19歳の家族内感染は3割に低下し、成人同様、経路不明が多い(ただし、上述したように10代後半の調査数は少ないため、やや偏りがある)。こうしたデータから見ても、全ての20歳未満のCOVID-19症例を「小児」としてを同一に分類するのは難しい。

夏休み明けの感染経路の変化について

COVID-19の第5波が騒がれていた8月末には、小児の罹患者も増加傾向にあり、学校再開によるクラスター発生が懸念される報道が良く見られた。実際に夏休みを延長した地方自治体もあったようだが、実際に、データベースのソート機能を活用して一定の時期を抽出した。

夏休みが終わった9月、10月だけを抽出したところ、全部で226件(2021年10月時点)。総数は減っているが、感染経路を見ると変わらず7割が家庭内感染だった。しかし、幼稚園・保育園での感染率が10%に増加、学校関係は5%のままという結果である。明確な関連性はまだわからないものの、変動がある可能性が推測できる。

詳しく見てみると、226件中、幼稚園・保育園内の子ども間で感染となったのが19名、保育士が1名、不明が2名となっている。同じソート機能を使った調査を7~8月でも行い、中間報告として日本小児科学会のホームページで掲載したが、大人から子どもへの暴露が主流であった。しかし、現状で調査数は少ないものの、子ども間で感染している可能性が見えている。

学校内でも同様に事が起きており、教師からの感染は2名で10名は子ども間の感染だった。N(サンプル数)は少ないが、初期の兆候が考えられる。

厚労省のデータから見る10代未満のCOVID-19拡大の可能性

厚労省が発表している全症例から見ると、2020年4月の時点で20歳未満の子どもが占める割合は3.9%だったが、2021年9月には15.5%と増加している。子どもの占める割合が増えている要因はさまざまであるが、成人のワクチン接種が進み、60歳以上の接触罹患者が減っていることが、相対的な影響を与えている可能性が考えられる。さらに、10歳未満と10代の割合を見ると7月頃までは10代以上の陽性例が多かった。しかし、8~9月あたりから10歳未満の割合が増えている。この頃には10代のワクチン接種が始まっている。10歳未満の陽性例が徐々に増えている背景には、①10歳未満はワクチン接種ができない(2021年10月時点)②適性にマスクができないなどが考えられる。今後、10歳未満の罹患者増加の可能性に注目する必要がある。

同様のことが米国でも起きており、今後、賛否両論ある小児へのワクチン拡大やそのペース等を検討する情報の1つと言えるだろう。

小児COVID-19症例への治療選択と予後

レジストリに登録された症例では、8割以上が無治療で軽快している状況となっている。次いで、アセトアミノフェンの処方が続き、そのほか、直近では少しずつステロイドの使用やレムデシビルでの治療報告も存在する。上述したように軽症例が少ないなかでの治療選択結果であり、小児COVID-19においては、現在も無治療で軽快している割合が多いと言える。

予後については、報告バイアスも考えられるが、75%が入院後、元気に退院し、残る25%弱が外来のみで回復している。死亡例は、厚生労働省からの報告では3例だが、レジストリでは1名となっている。

いずれにしても、成人と比べて小児の予後は比較的良いと言える。

小児COVID-19の新たな課題

小児重症症例および長期予後の把握

2021年3月までは急性期の患者のみをレジストリ調査の対象としていたが、小児多系統炎症性症候群(MIS-C)などのやや遅れて発症する重症症例や長期後遺症が評価できないため、2021年4月以降は、慢性期追加調査を開始した。

・重症症例

追加調査において「重症」の定義を満たした重症症例は現在までに5例が報告されているが、実際の国内小児重症症例を反映しているとは言い難い。回答率が低い理由として、レジストリに登録している医師は多忙であり回答する機会の維持が困難であることが予想される。重症例については、日本集中治療医学会による数分で回答が可能な調査が開始されている。

・長期予後

Long COVIDと言われる後遺症の発生状況に関する大規模な調査結果は、国内からは報告されていない。レジストリに登録して6か月以上経過した罹患者を対象として、主治医の先生方にLong COVIDの予後について確認した。

Long COVIDの定義は、COVID-19の罹患から1ヶ月以上経過した後に、COVID-19罹患と何らかの関連が想定される症状を認めた場合とする。現在までに673例の回答があり、最も多いのは嗅覚障害、味覚障害。次いで、全身倦怠感、長期の慢性咳嗽が続いている。そのほか、消化器症状もある。

長期予後として再評価したMIS-C(小児多系統炎症性症候群)については、主治医の判断ではなく、診断基準を満たすケースをカウントした。そのため過剰なカウントも考えられるが、MIS-Cを満たした症例は4例。Long COVIDの定義を満たす症例数は全673例中、18例であった。年齢中央値は14歳であり、今後、主に問題になりそうなのは10歳以上の症例であると予想される。割合としては2.7%がLong COVIDを有しているのが国内の状況と言える。

海外の報告だと頭痛が多いが、国内での登録ケースは少ない。英国の報告例を見ると、5歳-17歳を対象とした小児COVID-19は1734例で、評価時期が28日以上となるのは77件。そのうちLong COVID症例は4.4%だった。56日以上は25例で、Long COVID症例は1.8%まで低下した。また、5歳-11歳と比べて、12歳-17歳の割合が多く、やはりLong COVIDは10代に多い病態だということがうかがえる。症状においては、倦怠感や咽頭痛など、国内例と類似しているものの、頭痛の割合が多い。

最後に

COVID−19は私たちの日常生活に様々な影響を与えるが、そうした状況では、正確かつ最新の疫学情報をもとに、迅速で、的確な判断が必要とされる。その点、レジストリ調査はその一助になりうると認識している。「日本小児科学会 データベース」とインターネットで検索すると、結果が閲覧できる。また、登録ページは「日本小児科学会 データベース 参加」で表示される。お忙しい中ではあると思うが、引き続きご協力をお願いしたい。

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