
打撲傷から児童虐待を判別する臨床判断ルールを改良、米研究
「JAMA Network Open」より
乳幼児の打撲傷の特徴から虐待の有無を判別する既存の臨床判断ルール(bruising clinical decision rule;BCDR)を改良し、従来版よりも精度が向上したことを、米Ann & Robert H. Lurie小児病院のMary Clyde Pierce氏らが、「JAMA Network Open」に4月14日発表した。
Pierce氏らは、2010年にBCDRとして、「TEN-4」と名付けた打撲傷ルール(虐待を疑う打撲の部位がT=胴体、E=耳、N=首、生後5カ月未満の乳児はどこでも)を提唱している。今回同氏らは、このTEN-4の改良版を作成し、その精度を検証するため、2011年12月~2016年3月に、都市部にある小児病院5施設の小児救急部門で前向きの横断研究を実施した。計2万1,123例の児を対象に打撲傷の診察を行い、打撲傷の部位(全身34部位)、特徴的な傷跡のパターン(噛みつき、つねり、複数の線条など)、打撲傷の合計数、児の年齢などの情報を収集した。虐待事例であるか否かは専門家の見解によった。
今回の研究では、打撲傷が1カ所以上あった2,161例の児(平均年齢2.1歳、男児60%)を登録した。専門家が判断を示したのは、このうちの2,123例(98%)で、410例(19%)は虐待、1,713例(79%)は非虐待と認定された。
34部位それぞれについて虐待による傷の数と非虐待の傷の数を出してΧ²検定を行ったところ、TEN以外でΧ²値が大きかったのは顎(Angle of jaw)、頬(Cheeks)、眼瞼(Eyelids)、結膜下(Subconjunctivae)で、傷があれば高リスクであることが経験的に知られている唇小帯(Frenulum)を加えてこれらをFACESとして、パターン(p)とともにTEN-4に追加し、改良版BCDR「TEN-4-FACESp」を作成した。「TEN-4が認められるか」「パターンがあるか」「FACESに傷があるか」について、YesかNoかで枝分かれする判別ツリーを作成したところ、感度は95.6%とTEN-4の80.7%を上回り、特異度は87.1%でTEN-4の91.1%と有意差はなく、判別について良好な結果を得た。
これらの結果を受け、Pierce氏は「今回開発した新しい児童虐待のスクリーニングツールは、医師が臨床現場で虐待リスクが高い子どもを発見するのに役立つだろう。虐待というのはエスカレートしやすく、子どもの命を救うには早期発見が肝要であることからも、これは非常に重要だ」と述べている。
- 書誌事項
Validation of a Clinical Decision Rule to Predict Abuse in Young Children Based on Bruising Characteristics
Pierce MC, et al. JAMA Network Open. Published online April 14, 2021. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.5832