
小児MIS-Cリスクは黒人やヒスパニック系で高い可能性
「The Journal of Pediatrics」より
小児多系統炎症性症候群(MIS-C)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の合併症として知られている。MIS-Cと診断された児を前向きに観察した結果、MIS-Cのリスクは黒人やヒスパニック系で高かったとする論文が、「The Journal of Pediatrics」に6月25日掲載された。また、MIS-C症例とCOVID-19初感染例の間でウイルスのゲノム配列に相違は見られないことも分かった。
米ジョージ・ワシントン大学医学部・保健学科のRoberta L. DeBiasi氏らは、2020年3~9月にMIS-Cタスクフォースが定めたプロトコルに基づいて入院し治療を受けた小児124例(1歳以上10歳未満が過半数)を対象に、人口学的特徴、合併症などの臨床的特徴やウイルスゲノム配列などを調べる前向きコホート研究を実施した。このうち63例はMIS-Cと診断され(確定39例、ほぼ確実24例)、うち集中治療室(ICU)に入室したのは33例、入室しなかったのは30例だった。MIS-C以外の診断を受けた61例は対照群とした。また、RT-PCR検査におけるthreshold cycle(Ct)値やウイルスゲノムの検討には、有症状のCOVID-19初感染例510例を対照とした。連続変数に対してはWilcoxon順位和検定またはKruskal-Wallis検定を、カテゴリー変数に対してはFisherの正確検定を用いた。
その結果、MIS-C群では黒人とヒスパニック系が占める割合が高かったが(それぞれ46%、35%)、リスクが最も高かったのは黒人の子どもであり(オッズ比4.62、95%信頼区間1.151~14.10、P=0.007)、またICU入室例の45%はヒスパニック系で白人はいなかった。ICU入室例では、非入室例よりも収縮期心筋機能障害(39%対3%、P=0.001)や弁逆流症(33%対7%、P=0.01)などの心臓合併症を伴う率が高かった(55%対28%、P=0.04)。
MIS-C群のCt値の中央値は31.8で、510例の初感染例と比べて有意に高く、ウイルス量は少ないことが示された。また、MIS-C群では、対照群より可溶性インターロイキン-2(IL-2)受容体、IL-10、IL-6などのサイトカイン値が有意に高かった。さらに、サイトカインの分析では、重症例は非重症例よりもIL-2、可溶性IL-2受容体、IL-10、IL-6が、PCR陽性例は陰性例よりもTNF-α、IL-10、IL-6が、心臓合併症がある症例は合併症のない症例よりもIL-17が、それぞれ有意に高かった。ウイルスゲノム配列の系統分析では、欧州株(GH系統)が優勢だったが、MIS-C群と510例の初感染例との間でウイルス配列に相違は見られなかった。
今回の結果を受け、DeBiasi氏は「MIS-C群と初感染群との間に顕著なウイルス配列の違いが見られなかったことから、MIS-C発症をもたらす主な要因はウイルスではなく、宿主の遺伝子関連因子や免疫反応と考えられる」と述べている。
- 書誌事項
Multisystem Inflammatory Syndrome of Children: Subphenotypes, Risk Factors, Biomarkers, Cytokine Profiles, and Viral Sequencing
DeBiasi RL, et al. The Journal of Pediatrics. Published online June 25, 2021. doi: 10.1016/j.jpeds.2021.06.002