
COVID-19パンデミック期のデジタル機器使用時間が若年者の精神面に悪影響
「JAMA Network Open」より
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期において、パソコンやスマホ、タブレットなどのデジタル画面を見る時間(スクリーンタイム)が長いほど、若年者の精神面に悪影響が及ぶとする研究結果が、「JAMA Network Open」に2021年12月28日発表された。その影響は、デジタル機器の種類や年齢によって差が見られる可能性も示された。
米オンタリオ州では、若年者を対象とした複数のコホート研究が進行中である。「TARGetKids!」はプライマリヘルスケア施設ベースの0~5歳の健康な乳幼児を、「Spit for Science」は一般住民ベースの6~18歳の者を、「Sickkids Psychiatry」は精神科外来ベースの6~18歳の者を、「POND」は精神発達外来でケアされている6~18歳の者を、それぞれコホートとして追跡している。
Hospital for Sick Children(カナダ)のXuedi Li氏らは、2020年5月~2021年4月に、これら4つのコホートを対象に縦断研究を実施し、COVID-19パンデミック期において、デジタル機器の視聴が若年者のメンタルヘルスに与える影響について調べた。研究では、若年者の保護者に、デジタル機器の使用状況と子どもの健康状態や精神症状に関する質問票に、複数回にわたり回答させた。
研究では、デジタル機器の種類(テレビ、電子メディア、ビデオゲーム、eラーニング、ビデオチャットに分類)別にメンタルヘルスとの関連を調べた。精神症状は、抑うつ、不安、問題行動、イライラ感、多動や不注意とし、その状況を保護者に評価させた。線形混合効果モデルを用いてデジタル機器使用状況と精神症状との関連を分析した。
「TARGetKids!」は対象者の年齢が低いため、このコホートのみ単独で分析した。今回対象としたのは532人(平均年齢5.9歳、男児51.7%)で、スクリーンタイムが1日の中で1時間増えるごとの変化を検討したところ、テレビまたは電子メディアの視聴時間が長いほど、問題行動(2~4歳:β=0.22、P<0.001、4歳以上:β=0.07、P=0.007)と多動や不注意(β=0.07、P=0.04)のリスクが有意に高まることが分かった。
これ以外の3つのコホートでは、年長児や思春期の者1,494人(平均年齢11.3歳、男性56.5%)が対象となった。スクリーンタイムを0~0.5時間、1時間、2~3時間、4~5時間、6~8時間、9時間以上の6つから選ばせ、その結果から検討したところ、テレビ視聴または電子メディアの使用時間が長いほど抑うつ、不安、不注意になりやすく、また、ビデオゲームをする時間が長いほど抑うつ、イライラ感、多動や不注意になりやすいことが示された。さらに、eラーニングの時間が長いほど、抑うつと不安のリスクは増加した。
以上から著者らは、「COVID-19パンデミック期において、小児期から思春期の若年者がデジタル機器を長時間使用すると、精神面に悪影響が及ぶことが分かった。感染症の流行にかかわらず、若年者に対しては、デジタル機器を適切に使うよう啓発すべきであり、このためには科学的エビデンスに裏付けられた社会的支援のみならず、政策としての介入も必要である」と述べている。
- 書誌事項
Screen Use and Mental Health Symptoms in Canadian Children and Youth During the COVID-19 Pandemic
Li X, et al. JAMA Network Open. Published online December 28, 2021. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2021.40875