
就学前の介入で生活習慣是正とその維持が可能に
「Journal of the American College of Cardiology」より
就学前の子どもの生活習慣を改善し、それを長期にわたり維持するには多職種連携と多次元な教育プログラム、マルチレベルな介入が重要な鍵となるという研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」1月25日号に発表された。
Foundation for Science, Health, and Education(スペイン)のGloria Santos-Beneit氏らは、コロンビア、スペイン、米国の3カ国で実施した、未就学児を対象とした心血管系の健康増進のためのプログラム「Salud Integral-Comprehensive Health(SI!)」の10年間にわたる経験から得られた教訓について概説した。
Santos-Beneit氏らは、科学と教育現場の実践との間にある溝は、臨床研究で厳密に検討された有効性と、多職種の医療従事者と患者、地域社会などが協働して、EBMに基づく介入を臨床活動に取り入れ、根付かせていく実装科学(implementation science)をすり合わせていくことで埋められるものだと指摘。「効果的とされる過程を実際の場に持ち込むことは、複雑で時間のかかるプロセスであり、このためには実装研究(implementation research)を活用することが望まれる。学問と実際の教育との間には溝があるが、科学的に厳密な研究成果を実地の活動の枠組における分析に組み入れることで、この溝は埋められる」と述べている。
また、未就学児を対象に、長期にわたり生活習慣の改善を達成させるためには、(1)多職種によるチーム、(2)多次元的な教育プログラム、(3)マルチレベルな介入(学校や教室、教員、家族)、(4)地域プログラムの調整と地域社会の関与、(5)ランダム化比較試験による科学的な検証など複数の要素を統合する必要があると述べている。
著者らは、「幼児期から効果的な介入を行うことで、健康的な生活習慣が定着し、心血管疾患を広く予防するのに役立つ可能性がある」と強調。「子どもたちが多くの時間を過ごす学校生活は、生活習慣への介入を開始するのに最適な環境だ。われわれのレビューやこれまでの研究から、集団ベースの生活習慣への介入を開始するには、4~5歳が最も好ましい時期であることが示唆されている」と述べ、社会経済的地位など、子どもの健康や介入の有効性に影響を与える要因について、さらなる研究が必要だとしている。
- 書誌事項
Lessons Learned From 10 Years of Preschool Intervention for Health Promotion: JACC State-of-the-Art Review
Santos-Beneit G, et al. Journal of the American College of Cardiology 2022 January 25;79(3):283-298.