
学校での常時マスク着用でSARS-CoV-2二次感染リスクが大幅に低下
「Pediatrics」より
幼稚園から高校までの学校を含む学区を対象とした米国の調査で、新型コロナウイルスの二次感染リスクは、常時マスク着用を義務付けた学区で著しく低いという研究結果が、「Pediatrics」に3月9日掲載された。常時マスク着用を義務付けた学区と比べ、着用を任意とした学区では、二次感染リスクは3.6倍に上ったという。
米デューク大学医学部のAngelique E. Boutzoukas氏らは、感染対策としてのマスク着用が新型コロナウイルスの二次感染にどう影響するのかを検討するため、2021年7月26日から12月13日にかけて複数の州で、幼稚園から高校までを含む学区をオープンコホートとする前向き観察研究を実施した。感染対策の実施と感染状況は、各学区から報告された。研究には、接触者追跡を行い、一次感染(市中感染例)と二次感染(学校での感染例)を判定することができた学区を組み入れた。
組み入れ基準を満たした9州61学区の幼稚園から高校には、計111万2,899人の生徒と計15万7,069人の職員が通学・通勤していた。これらの学区の一次感染例は4万601例、二次感染は3,085例だったことから、二次感染率は約8%と計算された。学区全体のうちマスク着用を任意としたのは6学区、一部着用(任意で開始後、常時着用に移行した場合、一部の学年でマスク着用を義務付けた場合など)としたのは9学区、残り46学区では常時着用を義務づけていた。
マスク着用法別に見た市中感染100例当たりの二次感染数を、疑似ポアソン回帰モデルを用いて分析したところ、常時着用学区の7.3例(95%信頼区間6.3~8.4)に対し、一部着用学区では11.0例(同6.5~18.4)、任意着用学区では26.4例(同10.9~64.4)となった。つまり、二次感染率は、常時着用学区と比べて一部着用学区では1.5倍、任意着用地区では3.6倍だった。
著者らは、「これまでの報告と同様、対象集団における感染例の90%以上は、感染源が学校ではなく市中であり、二次感染率は低かった。しかし、二次感染率の計算結果から、常時着用学区の二次感染リスクは、着用任意学区と比べて72%も低下することが分かった」と結論。その上で、「感染に関するデータをリアルタイムに把握できる手段や方法を学校に提供することで、学校側は国全体や地域の感染予防策に対応しやすくなるだろう。同時に、対面での指導や教育を継続するための感染対策を適宜取っていくことが求められる」と付言している。
なお、数名の著者が、特定の製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
- 書誌事項
School Masking Policies and Secondary SARS-CoV-2 Transmission
Boutzoukas AE, et al. Pediatrics. Published online March 9, 2022. doi: 10.1542/peds.2022-056687