新型コロナ流行後に精神症状で受診する若年者の割合が増加
「Hospital Pediatrics」より
米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行した最初の1年間に、自殺念慮や自殺未遂、うつ病、不安障害、摂食障害、物質使用障害、強迫性障害といった精神症状により医療機関を受診した若年者の割合が増加したという研究結果が、「Hospital Pediatrics」に5月17日発表された。
米ボストン小児病院のPatricia Ibeziako氏らは、2019年3月から2021年2月にかけて、米北東部にある大規模な小児病院において、精神科関連の主訴で救急外来(ED)を受診、あるいは内科や外科に入院した18歳未満の若年者3,799人を対象に、後方視的に診療記録を調査した。診療録データを用いて、COVID-19パンデミック前後のそれぞれ1年間(2019年3月~2020年2月対2020年3月~2021年2月)において、精神疾患の診断とboarding(精神科的治療を受けるまでにEDや内科・外科病棟などに留め置かれること)の期間などを比較し、Χ2検定とt検定を用いて解析した。
その結果、COVID-19パンデミック前の1年間(患者総数2,020人)と比べ、パンデミック後の1年間(同1,779人)において割合が有意に増加していたのは、自殺念慮/未遂(49.7%→60.3%、P<0.001)、自殺未遂のみ(11.7%→20.7%、P<0.001)、うつ病(63.4%→70.4%、P<0.001)、不安障害(46.0%→50.5%、P=0.006)、摂食障害(6.9%→13.8%、P<0.001)、物質使用障害(6.7%→9.2%、P=0.006)、強迫性障害(3.5%→6.4%、P<0.001)であった。また、boardingの平均日数は2.1日から4.6日へと約2倍に有意に増加し(P<0.001)、患者の50.4%(896人)が2日以上のboardingを要していた。
以上から著者らは「米国では、boardingに必要な期間は10年以上前から増加し続けている。若年者の精神衛生を保つ上で求められることに米国の医療体制が応じきれない状態は慢性化しているが、この問題の存在は今回の研究からも明らかだ。小児の精神医療の改革は喫緊の課題だ」と述べている。(HealthDay News 2022年5月23日)
- 書誌事項
Pediatric Mental Health Presentations and Boarding: First Year of the COVID-19 Pandemic
Ibeziako P, et al. Hospital Pediatrics. Published online May 17, 2022. doi: 10.1542/hpeds.2022-006555