母乳栄養の期間は児の認知発達にわずかだが影響を与える可能性
「PLOS ONE」より
母乳栄養の期間は、社会経済的要因や母親の認知能力で調整しても、出生した児のその後の認知機能の発達に、わずかではあるが影響を与える可能性があるという研究結果が、「PLOS ONE」に5月25日掲載された。
英オックスフォード大学のReneé Pereyra-Elías氏らは、母乳栄養の期間と児の認知機能との関連を検討するため、2000~2002年に出生し、英国ミレニアム・コホート研究で14歳になるまで追跡調査された単胎児7,855人を対象に分析を行った。
母乳栄養の期間については母親に尋ねた。児の認知機能については、言語能力は5歳、7歳、11歳、14歳の時点でBritish Ability Scales Second Edition BAS IIを用いて評価し、空間能力は5歳、7歳、11歳の時点でBAS Pattern Construction sub-testまたはCambridge Neuropsychological Test Automated Battery (CANTAB)を用いて評価した。これら言語能力(5~14歳)および空間能力(5~11歳)のスコアを標準化し、多変量線形混合効果モデルを用いて、母乳栄養期間別に比較した。その際、まず因子調整なしで計算し、次にモデル1として在胎週数、母親の人種、使用言語を調整因子として取り入れ、さらにモデル2ではこれに社会経済的地位を追加し、モデル3ではモデル2に母親が外で働いているかなど、その他の因子を追加し、モデル4ではモデル3に母親の認知能力スコア(児が14歳時にWord activity質問票により評価)を追加した。
「因子調整なし」の結果では、全ての年齢において、母乳栄養育児の期間が長いほど、言語能力および空間能力のいずれのスコアも高まっていた。母乳栄養期間が12カ月以上だった児は、母乳栄養を全く受けなかった児より言語能力のスコアが0.39SD(95%信頼区間0.30~0.47)高く、空間能力のスコアは0.21SD(同0.13~0.29)高かった。モデル2で社会経済的地位を含めて調整すると、言語能力スコアも空間能力スコアも、全ての年齢で相当減少したものの、5歳の空間能力以外は依然として有意だった。
さらに、モデル4で母親の認知スコアを含めて調整したところ、5歳の時点で、12カ月以上の母乳栄養との関連は、言語能力でも空間能力でも有意ではなくなったが、7歳、11歳、14歳の時点では有意であり、例えば、14歳時点の言語能力のスコアは、母乳栄養期間が12カ月以上だった児では、母乳栄養を全く受けなかった児より0.26SD(同0.18~0.34)高かった。
著者らは、「この結果は、児の認知発達に対する母乳栄養の役割を過小評価すべきではないことを示している。認知発達の向上の程度は小さいものだったことから、臨床的にみると、個人レベルではあまり意味はないかもしれないが、集団レベルでみると、その潜在的影響は大きいのではないか」と述べている。(HealthDay News 2022年5月26日)
- 書誌事項
To what extent does confounding explain the association between breastfeeding duration and cognitive development up to age 14? Findings from the UK Millennium Cohort Study
Pereyra-Elías R, et al. PLOS ONE. Published online May 25, 2022. doi: 10.1371/journal.pone.0267326