気道損傷はボタン電池の誤飲による重大な合併症
「JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery」より
ボタン電池を誤飲した小児のデータを分析した結果、重大な合併症として気道損傷が挙げられ、特に気管食道瘻と声帯麻痺の頻度が高いことが、「JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に5月26日発表されたレビュー論文から明らかになった。
トロント小児病院(カナダ)のJustine Philteos氏らは、MEDLINE、Embase、コクランレビューのデータベースなどを用い、2021年7月31日までに発表された、ボタン電池の誤飲により気道損傷を呈した18歳未満の若年者について報告した論文のシステマティックレビューを実施。69論文から計195例の小児患者を対象に、ボタン電池誤飲後の気道損傷について分析した。
解析の結果、ボタン電池を誤飲した時点の小児の年齢は生後1週から5歳の範囲で、平均17.8カ月と低年齢児に多く見られた。気道損傷としては、気管食道瘻(155例)と声帯麻痺(39例;片側16例および両側23例)が最も多かった。ボタン電池の誤飲から除去までに要した平均時間は、声帯麻痺例では17.8時間であり、今回の対象全体の138.7時間(5.8日)よりも有意に短かった。39例の声帯麻痺例のうち、16例(41%)では気管切開を受け、両側23例のうち13例(57%)では気管切開および気管チューブ挿入を受けていた。また、気道症状を呈した小児は、その後に気管食道瘻や声帯麻痺を併発する割合が高かった。
著者らは、「ボタン電池の誤飲による気道損傷を防ぐためには、日頃から予防策を講じる必要がある。声帯損傷は、ボタン電池の曝露がごく短時間でも引き起こされる可能性があり、このような小児は、その後も耳鼻咽喉科的な処置なしでは済まされないことになってしまう」と述べ、「気道損傷による後遺症リスクを最小限に抑えるためにも、ボタン電池を可及的速やかに除去することが最優先される」と付け加えている。(HealthDay News 2022年5月27日)
- 書誌事項
Airway Complications Resulting From Pediatric Esophageal Button Battery Impaction A Systematic Review
Philteos J, et al. JAMA Otolaryngology-Head and Neck Surgery. Published online May 26, 2022. doi:10.1001/jamaoto.2022.0848