米国小児の肥満発症は低年齢化が進む
「Pediatrics」より
米国では、小児が肥満を発症する年齢が以前より低下し、肥満となるリスクが上昇しており、小児肥満は依然として深刻な問題であることが、米エモリー大学のSolveig A. Cunningham氏らが行った調査で明らかになった。詳細は、「Pediatrics」に7月5日発表された。
Cunningham氏らは、Early Childhood Longitudinal Studiesのデータを用いて、幼稚園に1998年に入園した児のコホートと2010年に入園した児のコホート(それぞれ1993年と2005年に出生したコホートに相当、年齢差は12年)を対象に、小学校5年生(2004年および2016年)の終わりまで複数回にわたり身体測定を行い、児における肥満の累積発症率と年間発症率の推移を調査した。「肥満」は米疾病対策センター(CDC)の標準発育チャートにおいてBMIが95パーセンタイル以上、「過体重」は85パーセンタイル以上95パーセンタイル未満、「標準」は85パーセンタイル未満と定義した。
分析では、入園時に肥満だった児を除外した。入園から小学校5年生終了時(6歳および11歳)までの肥満の累積発症率は、1998年コホートでは15.5%だったのに対し、2010年コホートでは16.2%となり、そのリスク比は1.045と肥満リスクは4.5%増加した。ただ、年間発症率には大きな変化は認められなかった。また、入園時にBMIが標準だった児では、肥満の累積発症率はいずれのコホートでも9.8%と不変だったが、過体重だった児では42.9%から44.3%となり、わずかな増加が認められた。
肥満の累積発症率における社会的格差には拡大が見られた。非ヒスパニック系黒人では、累積発症率は29%増加したが(17.3%から22.4%へ、リスク比1.29)、その他の人種や民族の児では横ばいか低下が認められた。入園時の社会経済的状況を4分位として比較に用いたところ、1998年コホートにおける最も恵まれない家庭の児における累積発症率は17.7%だったのに対し、2010年コホートでは20.3%となり、リスク比は1.15と肥満リスクには15%の増加が認められた。
以上を踏まえ著者らは、「2010年以降、レッツムーブキャンペーンなど小児肥満に対して公衆衛生上のさまざまな取り組みが行われてきたが、これらの政策は集団レベルの肥満の減少にはそれほど影響を与えていないと思われる」と述べている。(HealthDay News 2022年7月5日)
- 書誌事項
Changes in the Incidence of Childhood Obesity
Cunningham SA, et al. Pediatrics. Published online July 5, 2022. doi: 10.1542/peds.2021-053708