
NICU入室早産児に対する直接母乳栄養を促進するプロトコルを開発
「Advances in Neonatal Care」より
直接母乳栄養(DBF)には、母児双方にとって、栄養面以外にも、例えば精神的な面において多くの利点がある。しかし、確たるエビデンスもないが、人工栄養にすると早産児は早く退院できるといった勧奨が行われている場合もある。そうした中、新生児集中治療室(NICU)でのDBFに関する標準化したプロトコルを実践することで、妊娠37週未満で出生した児において、NICU入院中のDBF回数が増加したなどとする研究結果が、「Advances in Neonatal Care」に8月29日発表された。
米ミネソタ大学看護学部のNellie Munn Swanson氏らは、妊娠37週未満で出生した児を対象に、初めて与える経口食をDBFとした割合、NICU入院中のDBFの合計回数、児に与えた母乳の量を計量する頻度を増やすためのEATと呼ばれるプロトコルを開発した。EATのEはEncourage(出産後1時間以内に搾乳を開始するなど)、AはAssess(児が母乳を飲む準備ができているかに関するinfant-driven feedingスコアの評価など)、TはTransition(初めて与える経口食をDBFとし、与えた母乳量を計量するなど)である。2020年7月から10月までに入院した妊娠27.7~36.7週までの児38人に同プロトコルを実施し、2019年7月から2020年7月に入院した児を対照群として比較を行った。解析にはχ2検定、フィッシャーの正確確率検定、2標本に対するt検定、ウィルコクソン順位和検定を用いた。
その結果、EATプロトコルを実践したことにより、初めて与える経口食をDBFとした児の割合は22%から54%へと増加し、NICU入院中のDBFの平均回数は13.3回から20.3回へと増加した。また、母乳量の計量回数は110回から293回へと166%増加した。
以上の結果から著者らは、「標準化したプロトコルを用いることで、早産児に対するDBFを迅速に改善することができた。また、EATの適用により、新生児科医や看護師などの多職種が参加する医療チームにおいて、臨床意思決定や親の教育など、標準的なDBFが行われる頻度が増すことも分かった」と述べている。(HealthDay News 2022年9月8日)
- 書誌事項
Encourage, Assess, Transition (EAT): A Quality Improvement Project Implementing a Direct Breastfeeding Protocol for Preterm Hospitalized Infants
Swanson NM, et al. Advances in Neonatal Care. Published online August 29, 2022. doi: 10.1097/ANC.0000000000001037