AI活用で小児の多系統炎症症候群の迅速な鑑別診断が可能に
「The Lancet Digital Health」より
米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のJonathan Y. Lam氏らは、小児の多系統炎症症候群(MIS-C)と川崎病、その他の発熱性疾患を鑑別する人工知能(AI)を活用したアルゴリズムを開発。その有用性を検証した研究結果を、「The Lancet Digital Health」10月号に発表した。
小児のMIS-Cは、今回の新型コロナウイルス感染症の流行に際して確認された新しい病態で、新型コロナウイルス感染後の全身性炎症を特徴とする。川崎病やその他の急性熱性疾患と臨床的特徴が類似しているため、MIS-Cを早期に鑑別診断することが課題となっている。そこで、Lam氏らは、救急外来や急性期医療の現場において、小児のMIS-C、川崎病およびこれらに類似した発熱性疾患を早期に鑑別診断することを支援するAIアルゴリズムを開発し、その有用性を検証した。
Lam氏らは、患者の年齢、川崎病の5つの典型的な臨床症状、17の検査項目を用いて、「KIDMATCH(Kawasaki Disease vs Multisystem Inflammatory Syndrome in Children)」と名付けられたアルゴリズムを開発した。臨床的特徴については、米Rady小児病院と米コネチカット州小児医療センター、米ロサンゼルス小児病院においてMIS-C、川崎病、その他の熱性疾患と診断された患者から初診時のデータを前向きに収集した。鑑別診断は2つの段階から成り、第1段階でMIS-CまたはMIS-C以外の疾患に分け、第2段階でMIS-C以外の疾患を川崎病またはその他の熱性疾患に分ける。
まず、MIS-C 135例、川崎病775例、その他の熱性疾患673例を用いてKIDMATCHの内的妥当性を検討したところ、ROC曲線下面積の中央値は、第1段階で98.8%、第2段階では96.0%に達していた。次に、MIS-Cの患児(最終的に170例)を用いた外的妥当性の検証では、CHARMS研究グループコンソーシアムに参加する14病院の患者81例中76例(診断精度94%)、米ボストン小児病院の患者49例中47例(同96%)、国立小児病院の患者40例中36例(同90%)を正確に診断できた。
以上の結果から著者らは、「治療の第一線に立つ臨床医がKIDMATCHのアルゴリズムを活用することにより、MIS-Cや川崎病を含む熱性疾患を鑑別することができ、その結果、治療が迅速に行われ、重症化予防にも寄与するだろう」と述べている。(HealthDay News 2022年10月6日)
- 書誌事項
A machine-learning algorithm for diagnosis of multisystem inflammatory syndrome in children and Kawasaki disease in the USA: a retrospective model development and validation study
Lam JY, et al. The Lancet Digital Health 2022 October;4(10):e717-e726.