ピット・ホプキンス症候群児における骨格筋の脆弱性。
DOI:10.1186/s13395-024-00348-0
アブストラクト
背景:TCF4は免疫グロブリン増強因子Mu-E5/KE5モチーフに結合する転写因子として働く。TCF4の優性変異は、重度精神遅滞、顔面異形、呼吸リズム異常(発作性頻呼吸と過呼吸、それに続く無呼吸とチアノーゼ)を特徴とする稀な疾患であるピット・ホプキンス症候群の発現と関連している。しばしば、てんかん、小頭症、出生後の低身長も発症する。TCF4は骨格筋に発現しており、マウスで証明されたように、TCF4は筋形成に関与しているようであるが、ヒトの骨格筋では、優性TCF4変異体の存在によって起こりうる筋病理学的所見は今のところ報告されていない。
方法:TCF4のエクソン15と16に影響を及ぼす新規欠失が骨格筋に及ぼす病理学的影響について検討するため、大腿四頭筋生検で組織学的および免疫蛍光学的研究を行い、さらに標的転写産物研究およびグローバルプロテオミクスプロファイリングを行った。
結果:エクソン15と16にまたがる新規のヘテロ接合性欠失を有し、神経筋症状を呈するPitt-Hopkins患者の筋生検所見について報告する。筋生検の顕微鏡的特徴付けにより、中等度の線維I型優位、VimentinとCD90を共発現する線維芽細胞の割合の不均衡、TCF4変異筋における補体カスケードの活性化が明らかになった。タンパク質の調節異常はプロテオミクスプロファイリングによって解明された。転写研究により、筋肉におけるミトコンドリアの脆弱性が確認され、TCF4の発現低下が確認された。
結論:今回得られた知見は、Pitt-Hopkins症候群の表現型として初めて筋病理学的変化を明らかにしたものであり、この疾患の現在の臨床的知見を広げるとともに、モデルマウスの骨格筋で得られたデータを支持するものである。