炎症性腸疾患の妊婦における全身性酸化ストレスと胎盤不全のバイオマーカーの探索。
DOI:10.1016/j.freeradbiomed.2025.03.017
アブストラクト
背景:炎症性腸疾患(IBD)は妊娠可能な時期に発症することが多く、妊娠転帰に影響を及ぼす可能性がある。IBDも妊娠合併症も酸化ストレスが関与している。可溶性FMS様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)と胎盤成長因子(PlGF)は胎盤機能不全のバイオマーカーとして機能し、遊離チオール(FT)は全身の酸化ストレスを反映する。本研究の目的は、IBD患者における妊娠前、妊娠中、妊娠直後のFT、sFlt-1、PlGFの動態と、疾患および妊娠転帰との関係を評価することである。
方法:この後ろ向きコホート研究では、IBDの有無にかかわらず妊婦を対象とした。FTは比色法で測定し、sFlt-1とPlGFは免疫蛍光法で測定した。妊娠合併症やIBDパラメータを含む広範な臨床データを収集した。
結果:IBD患者57例と対照妊娠14例、計40例が参加した。潰瘍性大腸炎患者の血清FT値は妊娠中に有意に低下し(p = 0.007)、妊娠前と比較して低下した(p = 0.005)。妊娠中に疾患の増悪を経験した患者では、妊娠後のFT値は低かったが(p = 0.046)、sFlt-1/PlGF比は数値的に高かった(p = 0.063)。IBDの重症度は、手術歴(p = 0.066)および生物学的製剤の使用(p = 0.033)に関するFT値の低値と相関した。
結論:本研究は、妊娠中のIBD患者において、妊娠前の値や非IBD対照群と比較してFT値が低いことから、全身性の酸化ストレスが増加していることを示している。これらのバイオマーカーが妊娠合併症の予測や臨床判断に有用であるかどうかを評価するためには、プロスペクティブな検証が必要である。
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