ポリオワクチン接種の促進要因の解明:サハラ以南のアフリカ37カ国を対象とした多国間調査からの洞察。
DOI:10.1371/journal.pone.0316884
アブストラクト
背景:小児期のワクチン接種は、ポリオを含むワクチンで予防可能な疾病を予防するための、費用対効果の高い戦略である。アフリカ全域でワクチン接種率が向上しているにもかかわらず、ポリオは依然として公衆衛生上の懸念事項である。アフリカ諸国における経口ポリオワクチン(OPV)の脱落に関する複数国による分析は限られており、状況に応じた介入策の開発の妨げとなっている。本研究では、サハラ以南のアフリカ(SSA)におけるOPV接種率とその関連要因を調査した。
方法:本研究では、サハラ以南のアフリカ37カ国の人口保健調査(Demographic and Health Surveys)のデータを分析した。多段階多項ロジスティック回帰モデルを用いて、個人レベルおよび地域レベルの因子と、非接種、脱落、完全接種に分類されたワクチン接種状況との関連を検討した。4つの入れ子モデルが評価され、最も低い偏差(-2対数尤度比(-2LLR))を示すモデルが最も適合していると同定された。二変量解析でp値<0.2の変数は多変量解析に含めた。統計学的有意性と関連性の強さを決定するために、95%信頼区間(CI)を伴う調整相対リスク比(aRRR)が報告された。
結果:12~23ヵ月児におけるOPV1、OPV2、OPV3の接種率はそれぞれ86.59%、81.27%、68.41%であった。SSAにおけるOPV脱落率と完全接種率はそれぞれ19.38%(95%信頼区間:19.06%、19.69%)、67.77%(95%信頼区間:67.40%、68.14%)であり、脱落率は20.98%であった。ワクチン未接種と有意に関連する主な要因は、母親の教育(初等教育:aRRR=0.58;中等教育:aRRR=0.64;高等教育:aRRR=0.75)、世帯の貧富(貧困層:aRRR=0.91;中間層:aRRR=0.82;富裕層:aRRR=0.70)、母親の年齢(20~29歳:aRRR=0.67;30-39歳:aRRR=0.60;40-49歳:aRRR=0.59)、医療施設での出産(aRRR=0.28)、メディアへの露出(aRRR=0.64)、婚姻状況(現在既婚:aRRR=0.87)、分娩数(2-3回出産:aRRR=1.11)、農村居住(aRRR=0.73)であった。地域格差は、東アフリカに比べ、南部、中央、西アフリカでワクチン未接種と脱落のリスクが高いことを明らかにした。
結論:本研究は、SSAにおける経口ポリオワクチン未接種の多面的な決定要因を浮き彫りにした。予防接種率を向上させ、ポリオの再発を防ぐには、妊産婦教育の改善、医療施設へのアクセス向上、社会経済的不平等への対処、地域格差の緩和など、的を絞った介入が不可欠である。西アフリカと中央アフリカにおける重点的な取り組みは、予防接種プログラムを維持・拡大する上で極めて重要である。
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