Mim8のモデル情報に基づく創薬開発 - 血友病A治療のための次世代二特異性抗体
DOI:10.1016/j.ejps.2025.107162
アブストラクト
背景:血友病Aは、凝固因子VIII(FVIII)の欠乏によって引き起こされる先天性出血性疾患である。Mim8(デネシミグ)は、FVIII阻害剤の有無にかかわらず、血友病Aの皮下投与療法を目的とした第III相試験段階にある次世代活性化FVIII模倣型二重特異性抗体である。Mim8は段階的投与法を採用している。これは血友病治療において新規の投与アプローチであり、患者は自身の体重区分と選択した投与頻度に基づき固定用量を投与されるため、用量計算の必要性が減少し、治療薬の無駄を削減する可能性がある。
目的:本研究は、バイオマーカーデータと臨床エンドポイントデータの両方を用いて、Mim8の初期集団薬物動態(PK)およびPK/薬力学的(PD)特性を確立することを目的とした。モデルを用いて試験シミュレーションによる創薬開発判断を支援し、小児および成人集団における段階的投与法を用いた画期的な簡素化された治療選択肢として血友病の投与戦略を変革する。
患者/方法:第1相PK試験(NCT0512747)およびFRONTIER1試験(NCT04204408)でMim8に曝露した129名の参加者データを用い、トロンビン生成および治療対象出血に対する集団PKモデルおよびPK/PDモデルを開発した。これらのモデルを用いて試験シミュレーションを実施し、集団レベル(小児および青年/成人)および試験対象体重範囲における典型的な被験者レベルで、Mim8曝露量、バイオマーカー、臨床エンドポイント目標を評価する投与レジメンを最適化した。臨床エンドポイント目標は以下に設定された:(1) 集団レベルで6ヶ月試験中に治療を要する出血が70%以上の患者、および典型的な被験者レベルで全体重範囲・投与頻度において相対的出血リスクが95%以上減少、(2) 持続的なMim8曝露ピーク値が第I/II相試験で観察された最高曝露値を下回る。
結果:Mim8の集団PKは構造的二室モデルで最も適切に説明され、ベースライン体重がMim8曝露量に対する最も有意な共変量であった。ピークトロンビン応答および出血リスクに対するMim8効果は、E応答を伴う直接リンクPK/PDモデルで最も適切に説明された。モデル推定EC値は、ピークトロンビンで2.03 µg/mL、出血リスクで0.07 µg/mLであった。試験シミュレーションにより、3つの体重範囲(<15、15-<45、≥45 kg)における段階的投与が、週1回、2週間に1回、月に1回の全3投与頻度において臨床エンドポイント目標値と最大望ましい曝露量達成に有効と判明した。これは初回単回負荷投与により初日内に定常状態を確立し、その後所定の投与頻度で維持投与を行う方式である。体重範囲と投与頻度の9通りの組み合わせに対応する負荷投与量と維持投与量は、5種類の剤形によってカバーされた。進行中の第3相試験は、ここで提示した投与戦略に基づいて実施されている。結論:モデルに基づく薬物開発手法を用い、Mim8を用いた段階的投与戦略による新規治療パラダイムを設計した。これは血友病A患者を対象とした第3相試験で評価される予定である。
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