新規ワクチン接種により回避された呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による入院のシナリオ予測。
DOI:10.1001/jamanetworkopen.2025.14622
アブストラクト
重要性:2023年に、乳児と高齢者における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)による入院を予防するための新たな予防接種戦略が導入されました。これらの戦略の集団レベルでの影響を把握するためのモデリング研究は、公衆衛生計画の策定において重要です。
目的: 2023年から2024年にかけて新たなRSV予防接種戦略により回避される入院患者数を推定し、今後の季節におけるシナリオ予測を提供すること。設計、設定、および対象者: この意思決定分析モデルは、2023年10月7日から2025年4月26日まで、ワシントン州キング郡におけるRSVによる入院患者数を対象に分析しました。キング郡の人口は、6ヶ月未満の乳児、6ヶ月から11ヶ月の乳児、1歳から4歳の小児、5歳から59歳の小児/成人、60歳から74歳の成人、75歳以上の成人に分類されました。
曝露要因:60歳以上の成人に対するRSVワクチン接種、母親のRSVワクチン接種、および8ヶ月未満の乳児に対する長期作用型モノクローナル抗体(ニルセビマブ)。主要なアウトカムと測定指標:60歳以上の成人と1歳未満の乳児におけるRSV入院の回避割合は、RSV入院データで校正されたRSV伝播モデルを用いて推定されました。
結果:RSV伝播モデルは、約230万人の人口を含むキング郡の住民をシミュレートし、そのうち1歳未満の乳児が23,700人、60歳以上の成人が446,500人でした。2023年から2024年のRSVシーズン中、60歳から74歳の成人では21.2%、75歳以上の成人では32.7%、乳児では33.0%が、積極的または消極的な免疫接種により保護されました。合計125件(95%予測間隔[PI]、77-192)RSVによる入院が回避され、その効果の大部分は生後6ヶ月未満の乳児(基準値比28.6% [95% PI, 26.9%-30.5%] 減少)と75歳以上の成人(基準値比14.8% [95% PI, 14.3%-15.5%] 減少)で観察されました。2024年から2025年のシーズンにおいて、高齢者(50%)と乳児(80%)の高い接種率を想定した楽観的なシナリオでは、75歳以上の成人で29.8%(95% PI、29.1%-30.8%)の減少、6ヶ月未満の乳児で68.8%(95% PI、66.0%-71.7%)と予測されています。シーズン早期にニルセビマブの追跡接種対象の乳児を標的とした場合、6~11ヶ月乳児のRSV入院回避率は31.7%(95% PI、29.4%~33.9%)から40.4%(95% PI、39.0%~42.1%)に増加しました。75歳以上の成人におけるワクチン効果の50%減衰が接種後2年目に発生した場合、RSVによる入院を回避した割合は22.2%(95% PI、21.7%-23.0%)に減少すると推計されました。
結論と意義:このRSVワクチン接種の意思決定分析モデルの結果は、2023年から2024年のシーズンにおいて、特に乳児向けのワクチン製品の供給制限により、RSV診断入院の軽微な減少を示唆しています。シーズン早期の接種率向上は、2024年から2025年のシーズンにおいてRSV入院の著しい減少につながる可能性があります。
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