COVID-19パンデミック前後の回避可能な入院の動向:中国北京市における行政データを用いた複数横断研究。
DOI:10.2196/69768
アブストラクト
背景:回避可能な入院(AH)は、高所得国において一次医療の質を評価する代替指標として広く活用されてきました。しかし、中国を含む低・中所得国ではほとんど評価されていません。COVID-19パンデミック前後のAHの変化を分析した研究も限られています。パンデミック下でAHを一次医療の質を測る指標として適切かどうかは、十分に議論されていません。
目的:本研究の目的は、中国北京市におけるパンデミック前(2016年~2019年)とパンデミック中(2020年~2021年)のAHの動向を記述し、AH率に関連する要因を分析することです。
方法:2016年1月1日から2021年12月31日までの北京市住民の病院退院データを使用しました。退院ケースからAHケースを抽出し、人口構造の変化を調整した上で、各年のAH率を算出しました。COVID-19の発生、医療資源、社会経済的特性 を主要な説明変数として、AH率に関連する要因を回帰分析で探索しました。
結果:COVID-19パンデミック前、北京市における病院退院総数は2016年から2019年まで徐々に増加しましたが、2020年に急激に減少した後、2021年に一部回復しました。性別と年齢調整後のAH率は、2016年の10万人あたり514.7(95% CI 511.4-517.9)から2019年の552.8(95% CI 549.4-556.1)に上昇しました。その後、2020年に331.2(95% CI 328.6-333.8)に低下し、2021年に465.1(95% CI 462.1-468.1)に回復しましたが、依然としてパンデミック前の水準を下回っています。回帰分析の結果、新規確認されたCOVID-19患者の存在は、AH率の低下と有意に関連していました。その他の要因では、一次医療医の密度が高いほどAH率が低いことが示されました。さらに、AH率は人口構造、経済発展水準、および人口統計学的変数とも関連していました。結論:北京のAH率はパンデミック前に一貫した上昇傾向を示し、多くの高所得国よりも高い水準を維持していました。これらの特徴は、三次医療の過剰利用の可能性を示唆し、北京における医療システム改革の必要性を強調しています。特に、病院中心のモデルから一次医療重視の医療提供システムへの移行が求められます。さらに、AH率とパンデミックショックや社会経済的変数との関連性は、AHを一次医療のパフォーマンス指標として使用する際には適切な調整を行う必要性を示しています。
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