出生前殺虫剤曝露と不良出生転帰:アミノ酸およびアシルカルニチン代謝の障害を介した媒介作用の証拠
DOI:10.1021/acs.est.5c13454
アブストラクト
有機リン系(OP)およびピレスロイド系殺虫剤への母体曝露は新生児の健康に悪影響を及ぼす可能性があるが、既存の証拠と基盤となるメカニズムは限定的である。本前向きコホート研究(対象:406組の母体-新生児ペア、2022-2023年)では、アミノ酸およびアシルカルニチン代謝物解析を活用し、農薬曝露と出生転帰を結びつける代謝経路を解明した。 母体尿(妊娠初期/後期)から5種のOPおよび2種のピレスロイド代謝物を分析。新生児踵血から代謝物バイオマーカーを評価した。結果、妊娠後期における母体尿中の3-フェノキシ安息香酸(3-PBA)およびジエチルジチオホスフェート(DEDTP)濃度は出生体重と負の相関を示した。 具体的には、対数変換した濃度値が1単位増加するごとに、3-PBAでは出生体重が1.508%減少(95%信頼区間:-2.702~-0.299%)、DEDTPでは1.366%減少(95%信頼区間:-2.610~-0.105%)と関連した。 一方、ジメチルチオホスフェート(DMTP)は在胎週数と正の関連を示した(%変化=0.244%、95% CI=0.033%、0.416%)。この関連は男児でより強かった。有機リン系/ピレスロイド系農薬曝露は新生児のアミノ酸およびアシルカルニチンプロファイルの異常と関連し、そのパターンは妊娠期および性別によって異なった。 媒介分析では、細胞エネルギー代謝に不可欠なアシルカルニチンであるリノレオイルカルニチン(C18:2)が、3-PBAと低出生体重の関連性を有意に媒介していた。本研究は新生児メタボロミクスと有機リン系/ピレスロイド系農薬曝露を発育毒性と関連付けた初の研究であり、アシルカルニチンを介したエネルギー代謝の障害が不良な出生転帰に寄与する可能性を示唆している。
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