小児用人工内耳の動向:COVID-19とレバノン危機の二重の影響
DOI:10.1371/journal.pone.0331234
アブストラクト
背景:難聴は世界的な公衆衛生上の重大な問題であり、特に低・中所得国(LMICs)では、コストと医療インフラの不足により人工内耳(CI)へのアクセスが制限されている。レバノンでは、2020年の経済危機とCOVID-19パンデミックにより、小児CIを含む必須医療サービスへのアクセスがさらに減少した。
目的:本研究は、2020年のレバノン経済危機が小児CI手術件数および資金源に与えた影響を評価する。方法:2017年から2023年にかけて235件の小児CI手術を受けた228例を対象に、2020年危機前後で手術件数と資金源を比較する後ろ向き検討を実施した。資金源は政府、民間保険、寄付、またはそれらの組み合わせに分類した。データ解析にはRソフトウェアを用いた。結果:危機前(113件)と危機後(122件)の手術件数に有意差は認められなかった(p=0.56)。しかし、資金源には顕著な変化が生じた。政府資金による手術は45.87%から12.61%に減少(p<0.001)、民間保険と寄付による資金は32.11%から66.39%に増加(p<0.001)。手術時の平均年齢は危機後、5.86歳から3.57歳に低下(p<0.05)し、早期介入の利点に対する認識が高まったことを示唆している。
結論:経済的困難にもかかわらず、小児聴覚障害に対する需要は持続し、家族は私的資金や慈善団体に頼るようになった。政府支援の強化と聴覚障害治療の必須医療サービスとしての位置付けが不可欠である。聴覚障害児の予後改善のため、早期診断と介入を優先すべきである。
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