学会情報

第54回日本小児感染症学会総会・学術集会

プロテアソーム機能不全と自己炎症性疾患

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徳島大学大学院医歯薬学研究部生体防御医学分野の安友康二氏は、第54回日本小児感染症学会総会・学術集会(2022年11月5、6日・福岡)において、「プロテアソーム機能不全と自己炎症性疾患」と題し、講演を行った。

PRAASの病態とその機序

プロテアソーム機能不全による自己炎症性疾患には、日本では、難病指定されている「中條・西村症候群」、海外では「JASL」のほか、「JMP症候群」「CANDLE症候群」などがあるが、最近ではこれらを総称してPRAAS(Proteasome-associated Autoinflammatory Syndrome)と呼んでいる。

プロテアソームとは、ユビキチン化されたタンパクを分解する分子複合体であり、PRAASは、プロテアソームの各サブユニットの遺伝子異常によって発症する。

2011年、安友氏らにより、「PRAASの原因はプロテアソームサブユニットβ5iをコードする遺伝子(PSMB8)のホモ接合性バリアントである」と最初に発見され、以降、プロテアソーム分子集合が障害されるほかの遺伝子変異も続々と発見されている。

PRAASの症状・治療・要因

PRAASの主な臨床症状は、①免疫不全、②炎症病態、③脂肪萎縮であり、治療戦略としては以下の現状がある。

  • ・高濃度ステロイドで症状は抑制されるが、減薬するとしばしば再燃する
  • ・TNF-α阻害剤は一時的な効果をもたらす場合があるが、かえって発作を誘発する場合も報告されている
  • ・IL-6受容体抗体(トシリズマブ)の有効性は限定的である
  • ・JAK1/2阻害剤は著効する場合がある。ステロイド減量に効果がある。半数がステロイド離脱できたという報告(2018)もある

JAK1/2阻害剤はインターフェロンを抑制することで炎症を改善するが、インターフェロンを抑制しても完全には改善しないケースもあり、PRAASの炎症病態にインターフェロン以外の要因がある可能性が示唆されている。

PRAASの病態として、症状別の要因は次の通りである。

  1. ①免疫不全:不明
  2. ②炎症病態:インターフェロンに加え、それ以外の要素もある
  3. ③脂肪萎縮:脂肪細胞の成熟異常が示唆されているが、まだ明確ではない

PRAAS要因の最新知見

さらなる原因を解明すべく安友氏らは、PSMB8を変異させた「PSMB8-KI(Knock-In)マウス」を樹立した。このマウスを調べたところ、脂肪細胞の分化が悪く、PRAASの脂肪萎縮は、脂肪細胞の分化異常・成熟異常であると考えられた。

このマウスには、脂肪萎縮は認められたが、炎症病態は認められなかった。そこで、さまざまな炎症反応を誘導したところ、イミキモド誘導性皮膚炎発症の感受性が高くなっていた。

イミキモド誘導性皮膚炎はヒトのPRAASの症状にはないが、プロテアソーム活性が低下した際の炎症を考える上で有用であると考え、これらにさまざまな抗体や阻害剤を加えたところ、CXCR3経路が活性化していた。コントロール群でCXCR3経路を遮断しても炎症感受性は変わらなかったが、PSMB8-KIマウスでCXCR3経路を遮断すると炎症感受性が低下した。

このことから、「CXCR3がPRAASの炎症を起こす経路である」可能性が考えられた。

次に、PSMB8-KIマウスが炎症病態を発症しない原因を探った。

PSMB8-KIマウスでβ5が過剰亢進していたため、これが代償的に働いていると仮定し、PSMB5欠損マウスを樹立した。T細胞でPSMB5を消したPSMB5-KO(Knock-Out)マウスとPSMB8-KIマウスを掛け合わせたPSMB8-KI/PSMB5-KOマウスモデルで、脾臓でのT細胞増殖が障害されていることがわかった。これは、掛け合わせる前のPSMB5-KOマウスでは見られなかった。

さらに、このPSMB8-KI/PSMB5-KOマウスが成長すると、肺組織に好中球浸潤を主体とした炎症所見が認められた。

以上より、PRAASの病態とその要因として、

  1. ①免疫不全:T細胞増殖の低下が関与
  2. ②炎症病態:インターフェロンに加えCXCR3経路が関係している
  3. ③脂肪萎縮:脂肪細胞の成熟低下

という可能性が示唆された。

今後はさらに、プロテアソームの機能低下で、なぜこの3病態が起こるのか、なども免疫学的、生化学的に解明していきたいと安友氏は述べた。

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