中等症から重症のアレルギー性鼻炎を有する日本人小児における嗅覚機能障害。
アブストラクト
目的:小児アレルギー性鼻炎(AR)患者における嗅覚に関する詳細な定量的研究はまだ不十分である。本研究では、小児アレルギー性鼻炎患者における嗅覚機能障害を検討した。
方法:2016年7月から2018年11月にかけて、6~9歳の小児を募集し、AR(n=30)またはARなし(対照群、n=10)にグループ分けした。匂いの識別は、ユニバーサル嗅覚(U-Sniff)テストとオープンエッセンス(OE)で評価した。結果はAR群と対照群で比較された。鼻腔粘膜所見、鼻腔塗抹好酸球数、血中好酸球数、総免疫グロブリンE(IgE)値、スギ特異的IgE、Dermatophagoides pteronyssinus特異的IgEを全参加者で評価した。さらに、副鼻腔X線検査により、AR患者の副鼻腔炎とアデノイド肥大の有無も評価した。
結果:U-Sniffテストのスコア中央値は、AR群と対照群で有意差はなかった(それぞれ9.0 vs 10.0; p = 0.107)。OEスコアはAR群で対照群より有意に低く(それぞれ4.0 vs 8.0;p=0.007)、特に中等度から重度のAR群では対照群より有意に低かった(4.0 vs 8.0;p=0.004)。さらに、OEでは、「木材」、「調理用ガス」、「汗をかいた靴下」の正答率が、AR群では対照群に比べて有意に低かった。
結論:小児AR患者は嗅覚識別能力を低下させる可能性があり、その程度は鼻粘膜所見におけるARの重症度と関連している可能性がある。さらに、嗅覚機能障害は、ガス漏れのような「緊急事態」への反応を遅らせる可能性がある。