下垂体茎中断症候群を併発したCOL1A1変異体による骨形成不全症の1例。
アブストラクト
骨形成不全症(OI)は、人口10万人あたり6~7人が罹患するまれな遺伝性骨脆弱性障害であり、下垂体茎中断症候群(PSIS)は、程度の差こそあれ下垂体ホルモン欠乏を伴うまれな先天性欠損症であり、出生10万人あたり約0.5人が罹患する。現在、これらの合併症の症例は2例しか報告されていない。思春期に20回以上の骨折(末梢骨折と椎体骨折)を経験した46歳の男性が、精査のため当院を受診した。青色強膜と長管骨の変形がみられた。骨粗鬆症の治療を受けていた母親と姉にも 青色強膜がみられたため、起立耐性失調を疑った。遺伝学的検査の結果、COL1A1遺伝子のヘテ ロ接合体変異(c.757C > T, p.Arg253Ter)が同定され、起立耐性失調 と診断された。母親と姉も同じ変異体であった。幼少期に低身長のためGH補充療法を受けた ことを考慮し、GH欠乏が低骨密度に影響してい るかどうかを知るため、下垂体ホルモン値も評価し、 下垂体機能低下症が疑われた。下垂体機能検査の結果、視床下部GH欠乏症、性腺機能低下症、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症と診断された。さらに、磁気共鳴画像診断により、下垂体前葉萎縮、下垂体茎欠損、異所性下垂体後葉が認められ、PSISと診断された。起立耐性失調と下垂体機能低下症が組み合わさった ことで、骨がさらに脆弱化した可能性がある。したがって、まれではあるが、臨床医は、起立 耐性失調患者が下垂体機能不全を併発している可能 性があり、それが発育や成長の遅れにつながる可能 性があることを念頭に置くべきである。