千葉県における胃腸炎ウイルスの有病率モニタリングのための排水サーベイランス(2014-2019)。
アブストラクト
背景:日本では、感染性胃腸炎の動向を把握するためにセンチネルサーベイランスが行われている。病原体サーベイランスのもう一つの方法である廃水疫学は、患者データに頼らずに感染症を監視できることから、近年利用されるようになってきた。ここでは、患者報告数と胃腸炎ウイルス陽性検体数に反映されるウイルスの傾向を明らかにすることを目的とした。また、排水中に存在する胃腸炎ウイルスに着目し、感染性胃腸炎のサーベイランスにおける排水サーベイランスの有用性を検討した。
方法:廃水中のウイルス遺伝子検出にはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いた。小児科センチネルサイトあたりの患者報告数とウイルスゲノムコピー数を比較し、相関性を検討した。National Epidemiological Surveillance of Infectious Disease(NESID)から報告された胃腸炎ウイルス陽性検体数と、廃水から検出された胃腸炎ウイルスの状況も評価した。
結果:ノロウイルスI型、ノロウイルスII型、サポウイルス、アストロウイルス、ロタウイルスA群、ロタウイルスC群の遺伝子が排水から検出された。胃腸炎ウイルス陽性検体がNESIDに報告されていない期間にも、廃水からウイルスが検出された。
結論:ノロウイルス遺伝子型IIおよびその他の胃腸炎ウイルスは、胃腸炎ウイルス陽性検体が検出されなかった期間にも排水から検出された。したがって、排水を用いたサーベイランスはセンチネルサーベイランスを補完することができ、感染性胃腸炎のサーベイランスに有効な手段である。