非自己免疫性高サイロトロピン血症に伴う新規TSHレセプター遺伝子変異:症例報告。
アブストラクト
背景:TSHに対する抵抗性とは、正常で生物学的に活性なTSHに対する感受性が低下していることと定義され、甲状腺ホルモンを正常レベルにするためには、異常に高いレベルのTSHが必要である。
症例提示:高サイロトロピン血症のため小児期からレボサイロキシンによる治療を受けていた15歳の女性患者が、レボサイロキシン治療増量後に頻脈を訴えて当院に紹介された。甲状腺超音波検査は正常で、甲状腺抗体は陰性であった。甲状腺機能検査では潜在性甲状腺機能低下症が明らかであったが、症状を考慮して治療は徐々に漸減された。第一度近親者の甲状腺機能検査を行ったところ、父親も以前は知られていなかった潜在性甲状腺機能低下症であることが判明した。患者はTSHレセプター(TSHR)遺伝子の変異について遺伝子検査を受けたところ、p.C598R(c.1792T>C)というこれまで報告されていない遺伝子変異が見つかった。父親も検査され、同じ変異を有することが判明したが、他の第一度近親者はTSHR遺伝子について野生型であった。解析の結果、記載された変異に対応する機能喪失型表現型が発見され、新規の機能喪失型TSH受容体遺伝子変異が示唆された。
結論:この症例報告では、TSH抵抗性の表現型に関連するTSHレセプター遺伝子の新規機能喪失型遺伝子変異を提示する。