ムコ多糖症の早期診断における骨格X線スクリーニングの重要性。
アブストラクト
目的:ムコ多糖症(MPS)の早期発見を目的として、感染症、外傷、低身長など、代謝性疾患以外の理由で撮影されたX線写真を検査する。
方法:2022年1月1日から12月31日の間に当院の外来および救急外来を受診した小児のX線写真を、小児放射線科医が患者情報を知らずにレトロスペクティブに検査した。レントゲン写真で多発性骨異栄養症が認められた症例に対して、MPS酵素パネルと尿中グリコサミノグリカン分析を行った。酵素および尿検査でMPSが検出された症例では、遺伝子解析により確定診断がなされた。
結果:当院に入院した15.104例の骨格X線写真を検討した(胸部X線11,270例、腰仙椎X線314例、手X線2970例、骨盤X線253例、頭蓋骨X線162例、全骨格調査135例)。67人の小児において、骨格X線検査で多発性骨異形成が観察された。このうち、新たにMPSと診断された症例は7例であった。3例はMPS4A型、2例はMPS6型、1例はMPS2型、1例はMPS3B型と診断された。診断時の年齢は46.2±30.6ヵ月(範囲;20-111ヵ月)であった。6例(85.7%)に血縁関係があった。
結論:X線写真は、他の愁訴で入院した小児の臨床所見が顕著になる前にMPSを診断する手がかりとなる。したがって、MPSの流行地域の小児に対してX線スクリーニングを行い、多発性骨異形成を検索することができる。