耳原性および副鼻腔原性感染症を合併した小児頭蓋内圧膿腫。
アブストラクト
目的:集学的プロトコールが確立されている施設において、小児の耳原性・副鼻腔性頭蓋内圧膿腫(IE)の臨床的・微生物学的特徴、外科的・内科的管理、転帰を記述し比較すること。研究結果を用いて、施設のアルゴリズムに情報を提供し、更新すること。
方法:5年間に入院した耳原性・副鼻原性頭蓋内圧膿腫の全小児の電子カルテを対象にレトロスペクティブ解析を行った。
結果:合計76例の患者が同定され、施設のプロトコールに従って治療が行われた。耳原性感染に関連した頭蓋内圧膿腫(OI-IE、n=36)と副鼻腔原性感染(SI-IE、n=40)の2つのグループが同定された。SI-IEは年長児にみられ、罹患率が有意に高かった。硬膜下IEは少数派(n=16)で、SI-IEにのみみられ、緊急の耳鼻咽喉科と脳神経外科の連携が必要であった。硬膜外IEの発生頻度は高く、SI-IEとOI-IEの両方にみられた。死亡例はなく、全体的に罹患率は低かった。SI-IE群とOI-IE群にみられた特殊性(血栓症、微生物学的検査、抗生物質治療、罹病期間、転帰など)により、最新のアルゴリズムでこれらの群を定義することができた。
結論:我々の施設では、多職種が協力するプロトコールが存在するため、こ のような複雑な患者に対するケアを段階的に調整することが可能である。全例に迅速な画像診断、緊急の外科的介入、抗生物質治療が行われた。各患者の微生物学的同定は可能であり、無菌培養の場合にはPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)検査により抗生物質の合理化が可能であった。特筆すべき点として、副鼻腔炎に関連した頭蓋内圧膿腫は、耳原性感染に関連した頭蓋内圧膿腫よりも有意に重篤な臨床症状を呈し、罹患率が高く、抗生剤治療期間が長いことが示された。この研究結果によって、臨床像、生物学的証拠、X線検査、外科的治療、内科的治療が明確に区分されるようになった。