成長ホルモン欠乏症児における安静時ネットワークの変化。
アブストラクト
目的:成長ホルモン分泌不全症(GHD)とは、成長ホルモンの一部または全部が欠乏している状態を指す。低身長で成長が遅いのがGHD患者の特徴である。これまでの神経画像研究では、GHDが患者の認知・行動障害を引き起こす可能性が示唆されている。安静時ネットワーク(RSN)は、同期した活動を示す脳の領域であり、われわれの認知や行動に密接に関係している。そこで本研究の目的は、RSNの変化を調べることにより、GHD児の認知・行動異常を探ることである。方法GHD児26名と健常対照児15名の安静時機能的磁気共鳴画像(rs-fMRI)データを得た。独立成分分析を用いてrs-fMRIデータから7つのRSNを同定した。RSNの群間差は2標本のt検定を用いて推定した。相関分析を用いて、差異領域と臨床指標との関連を検討した。結果HCと比較して、GHD児は、サリエンスネットワーク(SN)、デフォルトモードネットワーク(DMN)、言語ネットワーク(LN)、感覚運動ネットワーク(SMN)において有意差があった。さらに、SN内では、右後頭頂上回の機能的結合(FC)値は副腎皮質刺激ホルモンと負の相関があり、左前下頭頂回のFC値はインスリン様成長因子1と正の相関があった。結論これらの結果は、RSNの変化が、運動機能の低下、言語離脱、不安、社会不安など、GHD児における認知や行動の異常を説明する可能性を示唆している。これらの所見は、小児におけるGHDの病態生理学的機序を明らかにするための神経画像的裏付けとなる。インパクトステートメント 成長ホルモン分泌不全症(GHD)の小児は、一般に認知・行動異常を経験する。しかし、GHD児に関する神経画像研究はほとんどない。また、先行研究ではGHD患者の脳機能異常を脳機能ネットワークの観点から検討したことはない。そこで本研究では、独立成分分析法を用いて、GHDにより一般的に観察される7つの安静時ネットワーク内の変化を調べた。その結果、GHD児では、顕著性ネットワーク、デフォルトモードネットワーク、言語ネットワーク、感覚運動ネットワークに有意差が認められた。これは、小児におけるGHDの病態生理学的メカニズムを明らかにする神経画像的裏付けとなる。