フィラグリン遺伝子変異と伝染性軟属腫の臨床的特徴との関連:日本環境と子ども研究の山梨付加研究。
アブストラクト
これまでの研究で、伝染性軟属腫(MC)感染の危険因子として、水泳、アトピー性皮膚炎、フィラグリン(FLG)遺伝子変異が報告されている。FLG遺伝子変異は皮膚のバリア機能を低下させる。本研究の目的は、FLG遺伝子変異がMCの発症率および臨床的特徴に及ぼす影響を明らかにすることである。前向き出生コホート研究である日本環境と子ども研究の山梨付加研究に参加した2036人の小児のデータを用いた。養育者を対象とした質問票(小児が4歳と8歳の時)により、MCの既往歴や治療歴、初診時のMC病変数、消失までの時間などの臨床的特徴について尋ねた。参加者は日本人集団に多い6つのFLG変異を検出するために遺伝子型判定を受けた。潜在的交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルを用いて、MC発症率とFLG変異との関連を解析した。8歳時点でのMCの累積発生率は47.1%であった。MCの既往のある参加者のうち、67.6%が掻爬術を受けていた。FLG変異はMC発症の有意な危険因子であった(調整オッズ比[aOR]1.69、95%信頼区間[CI]1.18-2.42)。水泳とアトピー性皮膚炎もMCの有意な危険因子であった。FLG遺伝子変異と初診時のMC病変数および病変消失までの期間との間に有意な関連は認められなかった。FLG遺伝子変異はMC発症の危険因子であるが、FLG遺伝子変異は初診時のMC病変の数や病変が消失するまでの期間には影響しない。