早産児と経産婦における呼吸器合胞体ウイルスAに対する抗ウイルス反応の違い。
アブストラクト
背景:早産児は正期産児に比べて重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に罹患しやすい。その理由は様々であるが、免疫系が未熟であることが大きな要因であると考えられている。
方法:早産児(妊娠30.4~34.1週)25名と経産婦(妊娠37~40週)25名から臍帯血を採取し、中和アッセイ、高次フローサイトメトリー、マルチプレックスサイトカインアッセイ、RNAシークエンシングを用いて、RSVAとRSVB刺激に対する臍帯血単核球(CBMCs)の反応を比較した。
結果:早産児と正期産児では、RSVAとRSVBに対する母体由来の中和抗体価は同程度であった。早産児は正期産児と比較して、骨髄性樹状細胞(mDC)のRSV感染率が有意に高かった。RSVAで刺激されたCBMCsの遺伝子発現差解析では、IL-10、IL-36γ、CXCL1、CXCL2、SOCS1、SOCS3が関与するサイトカイン産生および免疫制御経路に関与する遺伝子が、正期産児で濃縮される一方、早産児で発現差のある遺伝子(DEG)は、免疫応答遺伝子の発現に関連することなく、細胞周期(CDK1、TTK、ESCO2、KNL1、CDC25A、MAD2L1)に関連していた。さらに、正期産児で濃縮された遺伝子は高度に相関しており、RSVAに対する免疫応答の協調性が高まっていることが示唆された。RSVB刺激後の早産児と経産婦のDEGを比較したところ、免疫応答遺伝子に差は見られなかった。
解釈:全体的なデータとして、早産児は経産婦に比べてRSVAに対する免疫応答がより制限されていることが示唆された。さらなる研究が必要であるが、これらの知見は、早産児が重症のRSV疾患にかかりやすい理由を説明し、これらの脆弱な乳児を保護するための潜在的な治療標的を同定するのに役立つ可能性がある。
資金提供:Murdoch Children's Research Institute Infection and Immunityテーマ助成金。