胎内HIV曝露と子どもの脳構造および言語発達との関連:南アフリカ出生コホート研究。
DOI:10.1186/s12916-024-03282-6
アブストラクト
背景:HIV感染を免れているにもかかわらず、神経発達の転帰が不良となるリスクのある胎内HIV曝露児の集団が増加している。しかし、その根底にある神経生物学的経路は解明されておらず、神経画像研究も不足している。われわれは、HIV非感染児(HU)と比較したHIV曝露非感染児(HEU)の皮質脳構造を調査し、神経発達との関連を検討することを目的とした。
方法:Drakenstein Child Health出生コホート研究では、南アフリカのHIV感染率の高い地域の妊婦を登録し、母子ペアの縦断的追跡調査を行った。162人の子ども(HEU70人;HU92人)の2-3歳時の高解像度磁気共鳴画像スキャンを取得した。すべてのHEU児は、抗レトロウイルス療法を受けている母親から生まれた。T1強調画像から前頭前野領域の脳構造(皮質厚と表面積)を抽出し、多変量分散分析と線形回帰を用いて群間比較を行った。Bayley Scales of Infant and Toddler Development-IIIを用いて評価した子どもの発達と皮質構造との相関を調べ、媒介分析を行った。
結果:解析の結果、HIV曝露と前頭前皮質全体の皮質厚さとの関連が示された(p = 0.035)。HEUの子どもは、HUの子どもに比べて前頭前野の皮質が厚く、内側眼窩前頭皮質(mOFC)の皮質厚が有意に大きかった(3.21mm対3.14mm、p = 0.009、補正後効果量0.44[95%CI 0.12-0.75])。推定値は複数の感度分析にわたって維持された。皮質表面積に群間差はみられなかった。言語得点はHEU群とHU群で低く(81.82対86.25、p=0.011、効果量-0.44[95%CI -0.78~-0.09])、両群とも前頭前皮質厚と負の相関を示した。mOFCの皮質厚は、HIV曝露と言語アウトカム不良との関係を媒介した(Sobel検定 p = 0.032)。
結論:このコホート研究では、妊娠中のHIV曝露は生後早期の皮質構造の変化と関連していた。我々の知見は、HEU児における前頭前野の皮質厚の発達の違いが、言語障害につながる経路である可能性を示している。持続的な影響を明らかにするためには、縦断的研究が必要である。