レバノンの社会経済的崩壊の中での母子コホートの構築:予備的な結果と研究上の課題の克服。
DOI:10.1186/s12963-024-00325-1
アブストラクト
紛争や危機が母子の健康に与える影響は、脆弱な集団における信頼できる研究の必要性を強調している。経済破綻、政情不安、医療制度のひずみが続くレバノンは、こうした影響、特に早産児とその発育への影響を調査するためのケーススタディとなる。本研究の目的は、レバノンの母親とその満期・早産児の前向きコホートを構築し、国の多面的な危機の中で、社会的決定要因、早産、発達転帰の関連を調べることの実現可能性を評価することである。計画されたコホートには、出産時に募集された50組の満期産の母親と50組の早産児のペアが含まれ、出産後9〜12ヶ月まで追跡調査される。データ収集は、社会的決定要因、ストレス認知、社会的支援、生活の質、発達評価など多岐にわたる。レバノンの社会的・政治的・経済的混乱の中での募集、追跡調査、データ収集における課題を、社会的弱者における研究の倫理的配慮とともに評価した。予備的な知見では、特に人口の流動性、経済的不安定性、医療アクセスの問題から、募集と追跡調査にはかなりの困難が伴うことが明らかになった。こうした障害にもかかわらず、113組の母子ペアが採用された。初期の分析によると、出生率の低下と医療従事者の流出を背景に、母親、特に早産児を持つ母親が大きなストレスを抱え、生活の質が低下していることが明らかになった。レバノンのような危機的状況下で研究を行うことは、方法論や倫理面で独特の課題をもたらすが、脆弱な人々の健康状態を理解し、改善するためには極めて重要である。この研究は、危機的状況における研究において、適応可能な研究デザインと倫理的配慮の重要性を強調し、このような状況に合わせた介入の必要性を強調している。危機的状況にあるレバノンで母子コホートを確立することは、多くの課題に直面しているが、将来の介入を導くためには不可欠である。このような状況下での研究は、健康格差に対処し、脆弱な集団を支援するために必要であり、危機的状況下での専用資金と革新的な研究アプローチの必要性を強調している。