バングラデシュにおける腸チフス結合型ワクチン導入戦略の費用対効果と公衆衛生への影響。
アブストラクト
目的:腸チフスは、バングラデシュにおいてかなりの罹患率と死亡率をもたらしている。バングラデシュ政府は、拡大予防接種プログラム(EPI)のスケジュールに腸チフス結合型ワクチン(TCV)の導入を計画している。しかし、このようなプログラムの費用と便益に加えて、最適な導入戦略は不明である。
方法:既存の腸チフス感染に関する数理モデルを拡張し、コストデータ、臨床的罹患率データ、都市部、半都市部、農村部で最近実施された血清調査を統合した。一次分析では、現状維持(すなわちワクチン接種なし)と、定期的および1回限りのキャンペーン戦略を含む8つのワクチン導入戦略を評価した。モデルのアウトカムは、各戦略の臨床発生率、血清反応発生率、死亡数、費用、障害調整生存年(DALYs)、増分費用効果比(ICERs)であった。社会的視点、10年間のモデル時間軸、年率3%の割引率を採用した。ヘルスケアの視点と別のモデル時間地平線を採用することを含め、確率的、一元的、シナリオ感度分析を行った。
結果:すべてのTCV戦略は、現状と比較してコスト削減になると予測された。最も望ましい戦略は、生後9~12ヵ月にTCVを全国的に導入し、1~15歳の小児を対象にキャッチアップキャンペーンを1回実施するもので、他のすべての戦略や現状維持と比較してコスト削減が可能であった。実施後10年間で、この戦略は現状維持と比較して、377万症例(95%CrI:2.60 - 5.18)、1,131万人の死亡(95%CrI:3.77 - 23.60)を回避し、1億7,235万ドル(95%CrI:-14.29 - 460.59)を節約すると予測した。我々の知見は、パラメータ値や支払い意思の閾値の変更に対しておおむね頑健であった。
結論:バングラデシュにおいて、キャッチアップキャンペーンを伴う全国的なTCV導入は、腸チフス罹患率を大幅に減少させ、コスト削減につながる可能性が高いと予測した。