水痘帯状疱疹ウイルスの野生株とワクチン株の識別におけるナノポアシーケンス。
アブストラクト
背景:水痘ワクチンが小児科の定期予防接種プログラムに導入されたことにより、水痘罹患率は大幅に減少した。しかし、ワクチン株の水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による水痘、帯状疱疹、髄膜炎の報告があり、懸念が持たれている。ワクチン接種歴のある人のVZV感染における野生株とワクチン株の関係を確立することは極めて重要である。ワクチン株間の一塩基多型(SNP)の違いは、株の同定に利用できる。本研究では、ナノポアシークエンシングを用いてVZV株を同定し、臨床サンプルを解析した。
方法:VZV感染症患者の小胞および脳脊髄液サンプルをレトロスペクティブに検討した。対立遺伝子識別リアルタイムPCR法と直接塩基配列決定法を用いて同定した野生型株とワクチン株を各1検体ずつ対照とした。VZV株が未同定の10検体も含まれた。DNA抽出後、VZV ORF62領域をターゲットとしたロングPCRを実施した。ナノポアシークエンシングによりSNPが同定され、ワクチン株と野生型株の識別が可能となった。
結果:ナノポアシークエンシングにより、これまでに報告されている部位(105,705、106,262、107,136、107,252)にSNPが確認され、野生株とワクチン株の鑑別に役立った。未知の10検体のうち、9検体が野生株、1検体がワクチン株であった。VZVのDNA量が少ない検体でも、ナノポアシークエンシングは株同定に有効であった。
結論:本研究は、ナノポアシークエンシングがVZVの野生株とワクチン株の鑑別に信頼できる方法であることを実証した。ナノポアシーケンスは、既知のSNPの確認と新たな変異の検出を同時に行うことができ、そのロングリード配列の作成能力は注目に値する。ナノポアシークエンシングは、野生株とワクチン株を迅速かつ正確に識別するための貴重なツールとして役立ち、将来のVZVサーベイランスに応用できる可能性があります。