保因者における新生児遺伝性代謝疾患の生化学的指標異常。
アブストラクト
背景:新生児遺伝性代謝疾患に対する従来の生化学的スクリーニングは、偽陽性率が高く、陽性適中率が低いため、早期診断に寄与せず、両親の不安を増大させる。本研究では、新生児における偽陽性の説明を見つけることを目的として、従来の生化学的スクリーニングにおける遺伝子変異キャリアと生化学的指標との関係を分析した。
結果:本研究は962人の新生児を対象としたレトロスペクティブ研究である。新生児は出生時に血液染色による従来の生化学的スクリーニングを受け、保存された血液染色からNeoSeq Proパネルを用いてゲノムシークエンシングを受けた。合計632人の新生児が遺伝子変異の保因者であった。先天性甲状腺機能低下症保因者の56%は、正常新生児よりも甲状腺刺激ホルモン値が高かった。生化学的指標の異常は、有機酸代謝疾患の保因者の71%、アミノ酸代謝疾患の保因者の69%、脂肪酸β酸化障害の保因者の85%で検出された。有機酸代謝異常症の保因者では、プロピオニルカルニチン(C3)、C3/アセチルカルニチン(C2)、メチルマロニルカルニチン(C4DC)+3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン(C5OH)の濃度が非保因者に比べて高かった(C3:4.12 vs. 1.66 µmol/L、C3/C2:0.15 vs. 0.09、C4DC + C5OH:0.22 vs. 0.19 µmol/L)。アミノ酸代謝疾患を伴う保因者では、フェニルアラニン濃度は非保因者よりも高かった(68.00 vs. 52.05 µmol/L)。脂肪酸β酸化異常症の保因者では、ブチリルカルニチン値が非保因者より高く(0.31 vs. 0.21μmol/L)、遊離カルニチン値は非保因者より低かった(14.65 vs. 21.87μmol/L)。アミノ酸代謝疾患の偽陽性の結果が出た新生児では、陰性の結果が出た新生児に比べて保因者の出現率が高かった(15.52%対6.71%)。同様に、脂肪酸β酸化異常症で偽陽性の結果が出た新生児では、陰性の結果が出た新生児に比べて保因者の出現率が高かった(28.30% vs 7.29%)。
結論:本研究は、保因者が多数の新生児を占めていることを示した。保因者は非保因者に比べて生化学的指標に異常があり、これは従来の新生児生化学スクリーニングによる新生児の偽陽性率、特にアミノ酸代謝異常と脂肪酸β酸化異常の偽陽性率を説明することができる。