ムコ多糖症IIIBモデルマウスにおける疾患の初期マーカーの特性化。
アブストラクト
背景:ムコ多糖症(MPS)IIIBは、サンフィリッポ症候群Bとしても知られ、小児期の壊滅的な疾患である。残念ながら、現在のところMPS IIIB患者に対する有効な治療法はない。しかし、ライソゾーム貯蔵病の動物モデルは、有望な治療法を見出すための貴重なツールである。酵素補充療法、遺伝子治療、骨髄移植はいずれもMPS IIIBモデル系で有効性を示している。ライソゾーム貯蔵体疾患のげっ歯類モデルで共通してみられることは、症状が発現する前に介入することで最良の治療結果が得られるということである。したがって、本研究の目的は、MPS IIIBマウスモデルにおける疾患の初期マーカーを同定するとともに、このモデルではまだ検討されていない臨床的に関連性のある行動領域を検討することであった。
方法:MPS IIIBマウスモデルを用いて、コミュニケーションと歩行の初期発達の軌跡を調べ、その後の社会的行動、恐怖に関連した驚愕と条件付け、視覚能力を調べた。さらに、磁気共鳴画像法と拡散テンソル画像法を用いて脳の構造と機能を調べた。
結果:MPS IIIBマウスでは、母体隔離による超音波発声がコントロールマウスに比べて減少しており、多くのスペクトロテンソルの特徴が失われていることが観察された。また、MPS IIIBマウスでは、生後2週間の体温調節に障害がみられたが、体重に差はみられなかった。歩行の発達軌跡はほぼ正常であった。成体初期には、視力と社交性はそのままであったが、より従順な表現型が観察され、攻撃的行動が増加し、社会的嗅覚は対照群と比較して減少した。MPS IIIBマウスはプレトーンに対する驚愕の抑制が大きく、驚愕反応全体が減少し、恐怖記憶の誘発が減少した。MPS IIIBマウスはまた、成体期を通じて体重が対照群よりも有意に増加し、磁気共鳴画像と拡散テンソル画像で測定したところ、それぞれ組織の完全性を保ったまま脳全体の体積と正常化された局所の体積が大きかった。
結論:これらの結果から、このモデルでは生後2週間という早い時期に疾患マーカーが存在することが示された。さらに、このモデルは社会的、感覚的、恐怖に関連した臨床的特徴を再現している。MPS IIIBモデルマウスを用いた本研究は、将来的な潜在的治療法の評価に有用なベースライン情報を提供するものである。