COVID-19パンデミック時の身体的・精神的親密なパートナーからの暴力体験:オーストラリアの母親を対象とした縦断的研究におけるパンデミック前とパンデミックデータとの比較。
アブストラクト
目的:COVID-19の流行前と流行中の女性の親密なパートナーからの暴力(IPV)の経験を比較する縦断的な集団ベースの研究は不足している。Mothers' and Young People's Studyのデータを用いて、パンデミック初年度の身体的・精神的IPVの有病率をそれ以前のデータ波と比較した。
デザイン:オーストラリア・メルボルンの初産婦を対象とした前向き妊娠コホートで、COVID-19の大流行時に行われたクイックレスポンス研究により、母親になってからの10年間を追跡調査した。422名の女性が、産後1年目、4年目、10年目の主要曝露指標(IPV;Composite Abuse Scale)とパンデミック追加調査(2020年6月~2021年4月)に回答した。
アウトカム評価項目:抑うつ症状、不安症状、IPVの医師、友人、家族、他者への開示。
結果:パンデミック期間中(14.4%、95%信頼区間11.4%~18.2%)は、第1子出産後10年目(9.5%、95%信頼区間7.0%~12.7%)、4年目(9.2%、95%信頼区間6.8%~12.4%)、1年目(5.9%、95%信頼区間4.0%~8.6%)よりも、母親が報告した感情的IPVの割合が高かった。逆に、身体的IPVはパンデミック中最も少なかった(3.1%、95%CI 1.8%〜5.0%)。パンデミック中にIPVを経験した女性のうち、29.7%が初めてIPVを報告し、52.7%が抑うつ症状を同時に報告し、わずか6.8%が医師に話していた。
結論:パンデミック発生後のIPV関連犯罪統計の急増(典型的な身体的暴力事件)は、女性のIPV体験の氷山の一角であることが示唆された。身体的なIPVだけでなく、精神的なIPVも認識できるように医療従事者の能力を高める必要があり、女性が精神的な問題を抱える場合にはIPVを考慮すべきである。