TFEBは樹状細胞の抗原提示を制御し、喘息における免疫バランスを調節する。
アブストラクト
目的:喘息は小児に最も多くみられる慢性呼吸器疾患のひとつであり、その病態は樹状細胞(DC)による活性化抗原提示とT細胞サブグループ内の不均衡に関連している。本研究では、樹状細胞(DC)の抗原提示プロセスを調節する転写因子EB(TFEB)の役割と、T細胞サブグループの分化に及ぼす影響を調べる。
方法:ハウスダストマイト(HDM)を用いて骨髄樹状細胞(BMDC)を活性化し、RNA配列決定(RNA-seq)を行い、発現量の異なる遺伝子を特定した。健常児と喘息患者の末梢血単核球(PBMC)において、TFEB mRNAの発現レベルが評価された。HDMによって誘導された喘息モデルマウスでは、肺組織DCにおけるTFEB発現が評価された。さらに、LV-shTFEB BMDCsをT細胞と共培養し、DCの抗原提示、T細胞サブセットの分化、サイトカイン産生に対するTFEBの影響を調べた。
結果:トランスクリプトーム解析により、TFEBは免疫系経路と抗原提示に関連する有意な発現差のある遺伝子として同定された。特に、喘息と診断された小児のPBMCでは、健常者と比較してTFEBの発現が有意に増加していた。さらに、TFEBはHDM誘発喘息マウスの肺組織DCおよびHDM刺激BMDCsにおいて発現の亢進を示した。TFEBをサイレンシングすると、DC上のMHC II、CD80、CD86、CD40がダウンレギュレーションされた。この作用により、Th1/Th2細胞とTh17/Treg細胞のサブグループの均衡が回復し、IL-4、IL-5、IL-13、IL-17のような炎症性サイトカインの発現が抑制され、一方、抗炎症性サイトカインIL-10の発現が増強された。
結論:TFEBは、DCの抗原提示に影響を与え、T細胞サブグループの分化を制御し、サイトカイン分泌に影響を与えることによって、喘息の発症に重要な役割を担っている可能性がある。その関与は、喘息における免疫系のバランスを取り戻す上で極めて重要である可能性がある。これらの研究結果は、喘息を治療するための新たな治療法を明らかにする可能性がある。