東日本大震災後の放射線災害による旧避難区域におけるプライマリ・ケア診療所の受診状況:後方視的記述研究。
アブストラクト
放射線災害は、多様なケアアプローチを必要とする独特の医学的課題をもたらす。放射線被曝の評価だけでなく、ライフスタイルの変化による健康への影響、特に脆弱な人々の健康への影響に対処することは極めて重要である。放射線の影響を受けた地域で発令される避難指示は、独特の医療力学をもたらし、その期間は復興プロセスに大きく影響する。避難指示解除後に変化する患者の属性と医療ニーズを理解することは、災害後の医療計画にとって極めて重要である。南相馬市立小高病院は、福島第一原子力発電所から13~20km離れた避難区域に位置し、東日本大震災とそれに続く放射能災害により大きな影響を受けた。データは、年齢、性別、受診日、診断名、住所などの患者記録からレトロスペクティブに収集した。2014年4月から2020年3月までの患者記録を分析し、2016年7月の避難指示解除前後のデータを比較した。データは、国際疾病分類第10版コードを用いて避難指示解除前と解除後に分類し、上位の疾患を特定した。χ二乗検定を含む統計解析により、疾病分布の変化を評価した。小高区と南相馬市の人口データは、避難指示解除後に変動した。2011年3月11日時点の小高区の人口は12,842人(65歳以上が27.8%)であったが、2018年4月30日には登録人口8406人、実人口2732人(49.7%)に減少した。南相馬市も減少し、登録住民は7万1561人(25.9%)から6万1049人(34.1%)に減少した。この調査では、2014年から2020年の間に、高齢患者(75.1%)を中心に11,100人の患者を分析した。リフティング後、毎月の患者数は平均55.2人から213.5人に急増し、女性患者は33.8%から51.7%に増加した。疾患パターンは変化し、筋骨格系は23.8%から13.0%に減少、精神疾患は9.3%から15.4%に増加、外傷関連は14.3%から3.9%に減少した。高血圧症(57.1%)と脂質異常症(29.2%)がリフティング後に多かった。緊急症例は1.3%から0.1%に減少した。この研究は、避難後の地域におけるプライマリ・ケアの重要性を強調しており、外傷、非伝染性疾患、精神疾患などの多様な医療ニーズに対応している。患者の人口動態の変化には、増大する需要に対応するための、適応力のある医療戦略と資源配分が必要である。このような地域特有の課題に合わせた包括的な健康維持システムを確立することは、将来の災害復興に向けた取り組みにとって極めて重要である。