自己免疫性リンパ増殖症候群の発症におけるCASPASE-10変異の潜在的役割に関する研究。
アブストラクト
自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS)は、リンパ球のホメオスタシスの一次障害であり、慢性リンパ増殖、自己免疫性細胞減少症、リンパ腫リスクの上昇を引き起こす。ALPSの遺伝的背景には、FAS、FASLG、FADDの変異があり、これらはすべてアポトーシス欠損と関連している。本研究では、ALPSの病態におけるCASP10変異の影響を評価することを目的とした。当研究所の遺伝子解析プラットフォームで実施された数千の遺伝子解析データから、ALPSの発症に関与すると以前から疑われていたCASP10バリアント(p.C401LfsX15、p.V410I、p.Y446C)をヘテロ接合体およびホモ接合体の両方で有する個体を同定した。対象者6名の臨床的、検査的特徴は様々であったが、ALPSとは一致しなかった。2人は健康であった。CASP10蛋白発現とFASが介在するアポトーシスの包括的解析を行い、健常対照とFAS変異を有するALPS患者と比較した。一般集団によくみられるミスセンスのCASP10変異体(p.V410Iとp.Y446C)は、CASP10の発現を阻害せず、FASが介在するアポトーシスも阻害しなかった。一方、ホモ接合のp.C401LfsX15 CASP10変異体は、CASP10の発現を完全に消失させたが、FASを介したアポトーシス機能には影響を与えなかった。ヘテロ接合体では、このp.C401LfsX15変異体はCASP10タンパク質レベルの減少をもたらしたが、FASを介したアポトーシス機能は正常であった。これらの知見は、CASPASE10がFASを介したアポトーシスに必須でないことを示している。結果的に、CASP10欠損はALPSの病因に寄与する可能性は低いと考えられる。さらに、CASP10変異体を持つ患者ではFAS発現のアップレギュレーションが見られないことから、観察された正常なアポトーシス機能に関与している可能性のある代償機構は除外された。結論として、本研究は、CASP10変異体がALPSの発症に寄与するという考え方に疑問を投げかけるものである。