寄稿・インタビュー

「世界喘息デー」を知っていますか?

掲載日:
World Asthma Day 2024.05.07(火)  世界喘息デー  Asthma Education Empowers」

「世界糖尿病デー」や「高血圧の日」のように、多くの疾患には、年に一度の啓発日がある中で、同様に大変罹患者が多い疾患でありながら気管支喘息の啓発の日は、昨今の日本ではあまり知られていません。その啓発の日が忘れられていくことに、筆者は疑問の念を禁じ得ません。

忘れられていく喘息の啓発日

WHOの協力団体である Global Initiative for Asthma(以下、GINA)は、1998年に毎年5月第一火曜日を「世界喘息デー」と定め、各国において喘息の適切な管理を促進するための啓発活動を提案しています【参考1】。これは国際デーとしても認められており、海外では「世界喘息デー」に併せて喘息啓発・教育イベントが盛んに行われています。

実は日本でも故久保裕医師らにより1993年から「喘息デー」が開催されていました。「世界喘息デー」制定より以前であり、日本でも吸入ステロイド薬(ICS)による長期管理がようやく認められた時代でした。

その強い効果を喘息患者さんに広く知ってもらおうと「喘息デー」は有志の医療関係者の手で続けられていました。治療の普及に尽力されている最中、2013年に久保医師は亡くなられ、2014年に筆者が遺稿集『喘息百話』を発行しました。著書の中で「世界喘息デー」が制定されたことを大いに喜ばれ、いわゆる日本の「喘息デー」は「世界喘息デー」を継承されると期待されていました。

「世界喘息デー」が制定されたころは、日本でも講演会などの催し物がありましたが、今や忘れ去られたような状態です。高血圧や糖尿病など、さまざまな疾患にその啓発の日があり講演会や啓発のスローガンを見かけますが、日本で喘息だけは啓発の日がほとんど認知されず活用もされていません。

喘息の適切な管理を広く知ってもらうことの重要性

私は「世界喘息デー」を再度認識してもらうために、さまざまな協会、患者会や学会に「世界喘息デー」を機に何らかの啓発活動を計画してはどうかと、提案を続けてきました。

一部の団体は私の提案に反応し、シンポジウムの企画、Webサイトや一斉送信による会員への周知がありましたが、まだ多くの団体の反応はありませんでした。まだまだ啓発活動は十分とは言えず、市民に広く知れ渡るとは思えません。

大局の動きがないなかで、私は故久保医師が準備した任意団体「喘息フォーラム・日本(Asthma_Jp)【参考2】」の代表を引き継ぎ、「世界喘息デー」を広く知ってもらう行動をとることにしました。

喘息は決して人類から消えてなくなった疾患ではありません。人類は管理する手段を得たに過ぎず、医薬品を喪失するとたちまち、喘息による死者は増えるに違いありません。

GINAの訴えの通り、治療にあたる関係者は、喘息の適切な管理の重要性を市民に広く伝え続けるべきであり、啓発の日は必要不可欠と考えます。

たった1日の啓発日で世の中が変わる訳ではありません。それを繰り返すことで少しずつアイデアが生まれ、患者さんの支援が実現し状況が改善されていくのです。

喘息の疾患啓発活動を継続するために

今年(2024年)は5月7日が世界喘息デーです。この日には大手ポータルサイトに「世界喘息デー」である広告を出すこと、そして京都タワーをライトアップすることを目標に掲げました。その資金確保のためにクラウドファンディングを立ち上げ、92%の目標額の支援を得ることができました【参考3】。

実はクラウドファンディング自体が、存在する問題を世間に晒して考えるきっかけを作り、広く知らせる大変良い手段なのです。支援を求めて知人や学会で名刺交換した医師や患者会代表、喘息の専門家などに連絡を取り続けました。

このクラウドファンディングのリターンとして講演会を準備し3カ所の依頼がありました。リターン以外にも活動を知って、本サイトへの特集記事掲載やWebセミナーの依頼がありました。そして大学や製薬企業からも「世界喘息デー」に合わせた啓発活動をする旨、連絡を頂きました。

日本の喘息患者さんの数からするとまだまだ細やかなことですが、ネットサービスを利用することで、日本で「世界喘息デー」を呼び戻すことができた気がします。

喘息治療に携わる皆さんからのご支援を頂き、毎年周知を繰り返すことで、製薬企業の資金に依存せず、日本でも「世界喘息デー」に併せた啓発活動の復活を目指していきます。

(2024年3月20日)

オンデマンド配信:喘息の啓発日「世界喘息デー」を再び日本に!

Global Initiative for Asthma(GINA)は毎年5月第1火曜日を「世界喘息デー(WAD)」と定めました。日本ではWADについてほとんど関心を持たれていないことを不思議に思っております。ガイドラインの普及などによって気管支喘息で亡くなる患者さんは減っておりますが、診断や治療を受ける患者さんの数は変わりません。世界ではWADに合わせて、気管支喘息を啓発するために責任団体が現在も企画やイベントを行っております。今日の喘息治療の状況と世界喘息デーに合わせた日本での啓発日確立に向けた活動を紹介します。

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