学会情報

第53回日本小児感染症学会総会・学術集会

感染症診療における多職種との連携・他領域とのクロスオーバー

掲載日:
取材日:

2021年10月9日、10日に開催された「第53回 日本小児感染症学会総会・学術集会」での「ワークショップ2 小児感染症学の進歩と小児感染症専門家の育成を目指して」より、今回は高知大学医学部附属病院 山岸 由佳 先生が発表された「感染症診療における多職種との連携・他領域とのクロスオーバー」をレポートする。

山岸先生ご自身のキャリア

A大学病院の小児科から市中病院へ約2年ごとに2か所の病院へ異動した。地域の特性から、自身と部長を含め2~3人の体制で、かつ24時間365日体制にて救急外来・救急外来を敷いていたため、多くの症例を勉強できる環境であった。多忙ではあったが、地方会や研究会などにおける発表の機会も経験することができた。

卒後8年目に愛知医科大学病院の感染制御部へ入局した。病院の方針で、検査オーダーや処方権はなかったが、診療支援に徹した。そこから6年ののち、感染症科が新設となり、感染症科を主、感染制御部を併任となった。感染症診療と感染制御、どちらも欠かせない、まさに車の両輪として業務に携わることとなった。

一連のキャリアにおける学び

一連のキャリアの中で、最も重要視したのが臨床検査技師・看護師・薬剤師といった、医師以外の職種の専門領域のスタッフとのコミュニケーションであった。その中で、AST(Antimicrobial Stewardship Team:抗菌薬適正使用支援チーム)、ICT(Infection Control Team:感染制御チーム)という活動を通して他科連携との診療支援と学問を結びつける貴重な体験をすることができた。

小児科医としての強み

特に小児科領域の感染症に経験の少ない内科系や外科系の医師も存在する中で、小児科医として感染症診療を携わった経歴は自身のキャリアに大きな強みになった。また、逆に山岸先生ご自身が内科系あるいは外科系の医療知識を学ぶ側面もあり、感染症科の外来・入院診療のみならず、各科横断的な診療支援を行う現在の業務につながっている。また、全病院的に行うべき薬剤適正使用の管理や感染対策マニュアル作成、職員を含めたワクチン対策、アウトブレイク対応、といった多岐にわたる臨床業務にも対応している。研修医や学生への卒然・卒後教育に携わり小児感染症専門医を育成する機会にも恵まれた。

チーム医療について

各職種とのチーム連携

ASTが発足したことにより、より多科への診療支援が可能となり、また薬剤師との連携がより進んだ。小児においては感冒での抗菌薬の適正使用指示も挙げられる。SARS-CoV-2をはじめ、以前より飛躍的に遺伝子検査が普及してきているが、感染症診療においては常に意識したdiagnostic stewardshipを臨床検査技師とともに連携をとりながら実施している。

ICTでは主に看護師が中心となりながら、臨床検査技師、薬剤師などと連携し、チームでの活動が患者の予後改善や病院経営にも影響していくのではないかと考えている。

どちらのチームも役割は違えど目指すところは同じであり、またこれを学問とすることで、さらにチームのレベルアップにつながっている。

チーム医療のために心掛けていること

多職種それぞれと可能な限り直接対話すること、現場へ赴くことで、電話やメールではお互いが伝えきれないことを軽減し、また言葉に言い表せないこともあるかもしれない中でお互いの空気を感じながら気持ちの良いチーム医療ができるように心がけている。

チーム医療が円滑にいくことで、現場のスタッフに対してもより安心・適切な支援ができるようになる。

総括

適切な感染症診療・感染制御においては、医師だけでなく薬剤師や看護師、臨床検査技師といった多職種との連携が必要であり、またいずれにおいても他科との連携が不可欠だと感じた。また、山岸先生の、小児科医から感染症・感染制御の領域を専門としたキャリアパスの例を通して、専門性の深め方と同時に広げ方についても考えるきっかけとなり、キャリア構築への示唆に富む内容であった。

PAGETOP

「GrowthRing」は、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師等)を対象に、小児医療に役立つ情報をあらゆる視点から集めて提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

このサイトのご利用に際しましては、「GrowthRing」のご利用条件が適用されます。

医療関係者の方は、一部コンテンツをご覧いただけます。

医療関係者ではない方