学会レポート

第54回日本小児感染症学会総会・学術集会

自己炎症性疾患 インフラマソーム関連疾患

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インフラマソームはCaspase-1を活性化する分子複合体の総称であり、免疫系において生体防御を担うシステムであるが、関連する分子の遺伝子異常がある場合、炎症を引き起こす。

高田英俊氏(筑波大学医学医療系小児科)は、第54回日本小児感染症学会総会・学術集会(2022年11月5、6日・福岡)にて、代表的なインフラマソーム関連疾患を解説した。

パイリンインフラマソーム関連疾患

MEFV遺伝子のエクソン10遺伝子異常によりパイリンと14-3-3タンパクとの結合が障害され、パイリンインフラマソームの活性化が生じる。これが家族性地中海熱(FMF)の病態である。

FMFは熱や腹痛、関節痛を繰り返す。発作は年に3回以上、熱は1週間以内とされる。エクソン10の変異が見られないケースや、発熱が数時間以内もしくは4日以上、筋肉痛を伴うなどの非典型例も多く報告されている。

エクソン10の変異がない場合は、コルヒチン内服によって発作が予防できることを確認することが重要である。コルヒチンが無効もしくは副作用が強い場合には抗IL -1β薬(カナキヌマブ)を用いる。

ほかのパイリンインフラマソーム関連疾患

FMF以外のパイリンインフラマソーム関連疾患には以下のようなものがある。

  1. ①PAAND(Pyrin-Associated Autoinflammation with Neutrophilic Dermatosis)

    FMFと同じMEFV遺伝子異常が原因だが遺伝子異常の部位が異なり、皮膚炎や嚢胞性ざ瘡が見られる。

  2. ②PAPA症候群(Pyogenic Arthritis with Pyoderma Gangrenosum and Acne syndrome)

    パイリンを抑制しているPSTPIP1の異常でパイリンインフラマソームが活性化する。無菌性化膿性関節炎、壊疽性膿皮症、嚢胞性ざ瘡などが代表的な症状である。

  3. ③メバロン酸キナーゼ欠損症(高IgD症候群)

    MVK遺伝子の異常による。1歳前に発症し、周期性発熱や頸部リンパ節腫脹、消化器症状を引き起こす。IgDが高くないケースもあり注意が必要である。メバロン酸キナーゼは完全欠損ではなく、一部機能が残存しているのが特徴である。

NLRP3インフラマソーム

NLRP3インフラマソームは、PAMPs/DAMPsやATP、環境中の免疫賦活物質などによってシグナルが伝達され活性化する。家族性寒冷自己炎症症候群(FCAS)、マックル・ウェルズ症候群(MWS)、新生児期発症多臓器系炎症性疾患(NOMID)があり、CAPS(Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome)と総称されている。

  1. ①FCAS

    寒冷により発熱・発疹・関節痛が起こるが、持続時間は24時間以内である。発作時は全身倦怠感が強いことがある。

  2. ②MWS

    寒冷、ストレスにより蕁麻疹様皮疹を伴う発熱が24〜48時間持続する。発作時には結膜炎や関節痛、頭痛などが見られ、難聴や腎不全を併発する。

  3. ③NOMID

    生後まもなくから全身性炎症が持続するのが特徴である。蕁麻疹様皮疹、中枢神経系病変のほか、関節症、視力障害、発達障害、難聴なども見られる。

診断には炎症所見・骨関節所見・髄液所見・頭部MRI所見のほか、眼科・耳鼻科・皮膚科・整形外科などの診察も重要である。遺伝子異常が体細胞モザイクで起こっていると検出しにくいため、通常のサンガー法ではNLRP3の遺伝子変異が確認できない患者も3割程度存在する。

類似した臨床像を呈する遺伝子異常として、NLRC4遺伝子変異や、NLRP12遺伝子異常などがあり、注意が必要である。

治療としては、カナキヌマブが承認されている。

NLRC4インフラマソーム

NLRC4インフラマソームは、サルモネラなどの細菌の構成成分をNAIPが認識し、NAIP-NLRC4にASCやCaspase-1が結合し活性化される。NLRC4異常症は、発熱、寒冷蕁麻疹、関節痛、乳児期発症腸炎などを呈する。治療として、国内ではNSAIDやステロイドが用いられている。

NLRP1インフラマソーム

NLRP1インフラマソームは、炭疽菌や赤痢菌の毒素と結合し分解され、その分解産物が重合してCaspase-1を活性化する。NLRP1の異常による疾患として以下のような病態が報告されている。

  1. ①MSPC(Multiple self-heaking Palmoplantar Carcinoma):再発性角化棘細胞腫(扁平上皮がんとなるケースもある)
  2. ②家族性慢性苔癬角化症(Familial Keratosis Lichenoides Chronica:FKLC):苔癬様丘疹を伴う再発性角化棘細胞腫
  3. ③NAIAD(NLRP1-Associated Autoinflammation with Arthritis and Dyskeratosis):全身性の炎症が特徴的であるが、角化異常も見られる。
  4. ④再発性気道乳頭腫症(Juvenile-onset Recurrent Respiratory Papillomatosis:JRRP):外科的に切除してもまた再発する気道の乳頭腫が多発する。皮膚の角化異常を伴う。

AIM2の単一遺伝子病は現在のところ報告されていない。

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