山田 佳之(東海大学医学部総合診療学系小児科学)氏は、第59回日本小児アレルギー学会学術大会(2022年11月12~13日・沖縄)のシンポジウムにて、「EGIDの疫学と診断(non-EoE)」と題し、講演を行った。
好酸球性消化管疾患(EGID)は、2021年に新しい分類がなされ、好酸球性食道炎(EoE)とそれ以外(non-EoE)に分けられ、non-EoEはさらに好酸球性胃炎(EoG)、好酸球性小腸炎(EoN)、好酸球性大腸炎(EoC)等、部位毎に分類された。これにともない、今後は食物アレルギー診療ガイドラインも変わっていくと思われる。
本邦成人におけるnon-EoEは、2013-2017年の患者を対象とした全国調査では88人が報告されている。EoEとの比較では、欧米ではEoEの0.52倍(2016年)、日本では、2021年の全国調査でEoEの0.6倍という結果であった。本邦成人での2013年の調査ではEoEの5.5倍だったため、Non-EoEが減っている印象を受けるが、これはEoEが増えたことで、相対的にnon-EoEの有病率が下がったためと思われる。
また、小児のnon-EoEでは、現在でもEoEの7.5倍(2021年)という有病率であった。
non-EoEの診断
Non-EoEの診断には内視鏡による生検が必須である。
各消化管内の好酸球数を見てみると、一般に食道は好酸球が存在しないとされているが、それ以外の消化管には健常者でも好酸球が存在し、脱顆粒もあると報告されている。消化管ごとに分布を見ていくと、胃から上行結腸までは好酸球数は徐々に増え、そこから肛門までは逆に減少していく。しかしながら、ガイドラインではスクリーニングの基準がすべての消化管において、「20個/HPF以上」とされている。そこで、「Collinsの基準」として、消化管ごとの「好酸球増多」の基準値が設けられた。現在は、Collinsの基準を踏まえて簡略化した「Pesek基準」が用いられることが多い。具体的には、胃では30個/HPF以上、小腸で50個/HPF以上、大腸では60個/HPF以上を「消化管好酸球増多」としている。
「Pesek基準」の有用性を検証すべく、血便の精査にて内視鏡検査を行った症例を調査したところ、好酸球数20個/HPF以上の基準で診断と比較してPesekの基準のほうが、治療を必要としている患者をより正確に抽出できている可能性がしめされた。
Non-EoEの特徴には、性差がなく、14歳以下に多く、末梢血の好酸球増多が6割以上で見られるなどがあるが、一方で、内視鏡所見は非特異的であり、生検が必須である。
鑑別が必要な疾患としては、「好酸球増多症候群」や「好酸球性白血病」、「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」などの全身性好酸球疾患や「潰瘍性大腸炎」などの他の好酸球増多を認める消化管疾患がある。
「好酸球増多症候群」の診断は、「1,500/μL以上の末梢血中好酸球増多」と「多臓器症状」とされているが、この疾患における臓器症状として多いのが皮膚、肺、そして消化管であるため、Non-EoEとの鑑別が難しい場合もある。重症例やステロイド抵抗性なら、好酸球増多症候群を疑い、骨髄穿刺や骨髄増殖性新生物に関連するキメラ遺伝子の検査を依頼する。
Non-EoEの診断にあたっては、消化器症状を訴えた患者で、①末梢血好酸球増多を認め、特異的IgE、Th2サイトカイン(保険適用外)上昇などを認めた場合に、②内視鏡による検査、③生検による好酸球数増多の確認(カウント)、というステップを進める。
ここで、「内視鏡の所見がなかったため生検しない」「好酸球数をカウントしない」などで診断が遅れるケースがある。内視鏡では、所見がなくても必ず複数箇所を生検し、好酸球数をカウントしてもらうのが、早期発見のためには重要である。